「火星-最新画像で見る『赤い惑星』のすべて」ジャイルズ・スパロウ著 日暮雅通訳

公開日: 更新日:

 ノアキス大陸にあるクレーター底に形成された生物の細胞の顕微鏡写真のような神秘的な砂模様をはじめ、火星のさまざまな地勢を紹介しながら、その成り立ちから構造、火山活動や気候などを解説。

 何といっても圧巻は、火星の名所めぐり。平原から砂丘地帯、火山があるかと思えば急峻な峡谷まで、火星のさまざまな景観を衛星や探査機による最新の映像で紹介する。

 オリンポス山は、太陽系最大の火山。その高さは火星基準面から2万1229メートルとけた違い。直径624キロは、米国アリゾナ州とほぼ同じ大きさだという。
 その他、北極・南極の氷冠をはじめ、縁の軟らかい物質が浸食されホタテガイの貝殻状になった美しい「ビクトリア・クレーター」、直径3300キロという巨大クレーターに火山の溶岩がなだれこみできた太陽系最大のインパクト窪地「ユートピア平原」、そして「夜の迷宮」という名前が付いた「ノクティス・ラビリントス」など。そこが2・2億キロ以上も離れた場所とは思えないほど、鮮明な映像で火星のダイナミックさと繊細さを伝える。

 神の存在すら感じられない原始の世界。果たしてここに人が立つ日が来るのであろうか。本書を眺めていると、かつて火星を仰ぎ見ていた人たちが、自分たちの子孫があの場所に探査機を送り込む日が来るなど想像もできなかったのと同じように、数世代後には火星と人類の新たな関係が始まる予感がしてくる。(河出書房新社 3800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手