「洋楽日本盤のレコード・デザイン」植村和紀著
ダウンロードによる音楽配信が当たり前の世代には、「ジャケ買い」なる言葉は死語どころか、もはやその意味さえも通じないかもしれない。ところが、ここ数年、アナログレコード復活の動きがにぎやかだという。本来の温かみのある自然音への回帰とともに、ジャケットのアートワークの魅力もその復活に大きく貢献しているようだ。
本書は、日本独自のアートワークが施された往年の洋楽日本盤シングルのジャケットの世界を紹介するビジュアルブック。
洋楽日本盤シングルの発売は、1950年代中頃から本格的に始まった。日本のロックンロールの扉を開けたエルヴィス・プレスリーの「ハートブレーク・ホテル」(56年)のように、当初はオリジナルのタイトル表記やデザインを踏襲したものが多かった。50年代後半になると、邦題を入れた独自のジャケットが増えてくる。中にはナンシー・シナトラの「リンゴのためいき」(63年)のように原題(THINK OF ME)とは全く関係ない邦題がつけられたものもある。
そのデザインの特徴は、なんといっても手書きのレタリング文字にある。60年代前半に一大ブームを巻き起こしたビーチ・ボーイズの「ファン・ファン・ファン」(64年)などはその最たる例だ。