「ロンドン歴史図鑑」キャシー・ロス、ジョン・クラーク著、樺山紘一解説、大間知知子訳
しかし、5世紀に入りローマの支配が終わると、ロンディニウムは放棄される。歴史と考古学上の記録がない200年間の空白を経て、ドイツ北部から移り住んできたアングロサクソン人による王国の都市がかつてのロンディニウムの西に発達。
しかし、バイキングの襲来で衰退し、9世紀に彼らはその土地を放棄して、廃虚化していたロンディニウムの市壁の内側に移動し再び活気を取り戻すが、デーン人の侵略を受け、デーン人の王カヌートがイングランドの王位につく。
こうして支配者や住人たちが目まぐるしく変わるロンドンの興亡の歴史を現在にいたるまで詳細に解説。テムズ川から発見されたというローマ皇帝ハドリアヌス帝(122年にブリタニアを訪問)の胸像や、アングロサクソン人の墓から出土した副葬品、そして第2次大戦初期、有毒ガスの使用に備えて配られた乳児用のガスマスクなど、往時をしのぶ品々の写真も多数収録。
ただ時系列に都市の歴史をたどるのではなく、日曜日を除く毎日、多くの常設劇場で演劇が上演されていたという16世紀末に始まる演劇の発展や、ジョージ王朝時代に発達したゲイのサブカルチャー、18世紀の社会問題の原因となっていた安酒のジンの乱飲など。時代時代のトピックスを取り上げて、複層的にロンドンの移り変わりを読み物として紹介してくれるため、授業的な堅苦しさは感じられない。