「ナノサイエンス図鑑 未来が見える極小世界」ピーター・フォーブズ、トム・グリムジー著、日暮雅通訳
1ナノメートルは、10億分の1メートル=100万分の1ミリ。原子や電子、分子のレベルを扱う「ナノテクノロジー」は、さまざまな科学技術への応用が期待され、日進月歩の勢いで研究が進む科学分野のひとつである。
その成果のひとつが、1991年に日本人研究者が発見した「カーボンナノチューブ」だ。この発見によって地球と静止衛星の軌道を結ぶ「宇宙エレベーター」の実現が現実味を帯び、人類の宇宙への夢はさらに広がった。
本書は、肉眼では見えないナノスケールの世界で繰り広げられるナノテクノロジーの基礎から最先端の研究までを分かりやすく解説してくれるサイエンスブック。
ナノスケールの世界への扉を最初に開いたのは、物理学者リチャード・ファインマンだった。1959年、彼は「底のほうにはまだ十二分の余地がある」と題した講演で、目に見えない分子と、複雑精緻なエンジニアリングの驚異の数々を内包する生きた細胞には、スケールの差があるだけだとし、「エンジニアもまた、このスケールで操作できれば、さまざまな驚異を実現できるはずだ」と説いた。