“ふうせん”で追う宇宙への夢
「宇宙を撮りたい、風船で。」岩谷圭介著
私事で恐縮だが、小学生の頃、「自作の凧」揚げに熱中したことがあった。ビニールシートと竹ヒゴ製のシンプルな物だが、冬のある日、わが「会心作」を近場の高台で揚げてみた。米粒大になるまで上昇するも、手元の糸がなくなる寸前、強風に煽られ糸が切れた。凧は行方知れず。ひどく悔しく悲しい帰り道となった。
「これは、風船を使った宇宙撮影を何百回も失敗を繰り返しながらもなお、挑戦し続けるお話です。(略)まずは、『やってみる』から、はじめよう。これが夢を追いかける合言葉なのかもしれません」(「はじめに」から)。
幼少期から学生時代をへて現在まで続く「ふうせん宇宙撮影」の活動記録。失敗してもなお次のステップへの手がかりをつかむ、著者自身の「成長物語」になっている。また、他者を巻き込みながら、「実験」が次第に「プロジェクト」化していく過程が興味深い。その書きっぷりも含め、真摯で地道な取り組みが好印象だ。
四六判、ソフトカバー、本文224ページ、巻頭と巻末に8ページずつ、カラーの別丁が付く。巻頭部分では打ち上げから宇宙空間に到達するまで、巻末では地上へ落下する様子をコマ割りで順に紹介。個人、しかも手作りの装置によるとは思えない高画質な写真が並ぶ。一方、本文用紙には淡クリーム色の微塗工紙が選ばれ、インキの「乗り」も細部の再現性も良好だ。オモテ4色/ウラ1色刷りで、ここぞという場面で、見開き扱いで大きくカラー写真を配するなど「劇的効果」の演出に一役買っている。また、打ち上げ準備中のスナップ写真やこまごまとした機材、工具類もカラーで紹介するなど、丁寧な構成だ。