「砂上」桜木紫乃著
北海道・江別に住む柊令央は、いつか作家になることを夢見て小説を書き続けている40歳の女性。元夫から振り込まれる離婚の慰謝料とビストロ勤務で得るわずかなアルバイト代を支えに、文芸誌の新人賞に何度も応募していたが、手応えが得られないまま、いつしか年月が過ぎていた。
そんなある日、令央の目の前に今までの新人賞応募作を読んできたと語る女性編集者・小川乙三が現れる。期待を胸に対面した令央だったが、彼女の口から発せられるのは責めるような鋭い言葉。「あなたは何がしたいんですか」という問いかけに発奮し、自分が死ぬまで秘密にしようと思っていたあることを題材にした小説を改めて書くことを決心する。しかしそれは苦難の始まりだった……。
「ホテルローヤル」で第149回直木賞を受賞した著者による最新作。小説家志望の女性を主人公にして、小説という虚構の世界を立ち上げていく過程や編集者と小説家との緊張感あふれる関係性をリアルに描いている。
(KADOKAWA 1500円+税)