「お茶壺道中」梶よう子著
宇治で生まれ育った仁吉は、日本橋の森山園という葉茶屋に奉公している。毎年、将軍に献上する宇治茶が運ばれてきて、初夏のころ江戸に着くのだが、そのお茶壺道中を見るのが何よりの楽しみだ。大旦那の太兵衛は仕事熱心な仁吉をかわいがり、元服させて仁太郎と名付けた。
若衆に昇格した仁太郎は、ある日、太兵衛のお供で旗本の阿部正外の屋敷に向かう。横浜にできる港のことが話題になったとき、仁太郎は、異国の者がお茶を求めるか尋ねて、清国では茶葉がきっかけで戦争が起きたことを教えられて驚く。太兵衛の孫娘のお徳は仁太郎につらく当たったが、才覚のある仁太郎はやがて店を任されることに。
日本一の葉茶屋を目指す男を描く時代小説。
(KADOKAWA 1700円+税)