「赤い風」梶よう子著

公開日: 更新日:

 時は、徳川綱吉の治世。川越藩領内には、牛馬の飼料や堆肥を作るための草を採取する「まぐさば」と呼ばれる土地があった。周辺には、川越藩領や幕府直轄領、旗本の知行地、小さな領と呼ばれる区域が入り組み、境界線さえ定かでない上に、野銭を払って採取や伐採をするという決まりがあった。

 こうした背景のなか、村同士の争いが長く続き、ついに死者が出るはめに。そんな折、川越藩主となった柳沢吉保は、水も引けないその荒地を「2年で畑地にせよ」という不可能とも思える命を出す。

 果たして、その狙いとは……。

 本書は、現在埼玉県の指定旧跡になっている「三富新田」が農耕に適した肥沃な土地に生まれ変わるまでの苦闘を描いた歴史小説。2017年に埼玉新聞に連載され、加筆修正の上まとめられた。川越に送り込まれた荻生徂徠のもと、自宅と雑木林と耕作地を配置した細長い短冊上の区画内に農民が入植し、土地を作り変えていく姿が描かれている。

 (文藝春秋 1800円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ダウンタウン浜田雅功の休養でよぎる2023年の「意識障害」報道…「前日のことを全く記憶していない」

  2. 2

    フジテレビ30代アナ永島優美、椿原慶子が辞めて佐々木恭子、西山喜久恵50代アナが居座る深刻

  3. 3

    ダウンタウン浜田雅功が休養でテレビ業界大激震…キー局編成関係者「いずれ番組の打ち切り話が出てくる」

  4. 4

    男性キャディーが人気女子プロ3人と壮絶不倫!文春砲炸裂で関係者は「さらなる写真流出」に戦々恐々

  5. 5

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  1. 6

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  2. 7

    志村けんさん急逝から4年で死後トラブルなし…松本人志と比較される女性関係とカネ払い

  3. 8

    【動画あり】イケイケ国民民主党に“パワハラ問題”噴出!女性衆院議員からの罵倒叱責で体調不良に…4人も離党の異常事態

  4. 9

    “現代の遊女”吉原のソープ嬢はNHK大河ドラマ『べらぼう』をどう見ている? 地元は特需に沸く

  5. 10

    日テレ「さよなら帝国劇場」でわかったテレビ軽視…劇場の階段から放送、伴奏は電子ピアノのみ