「赤い風」梶よう子著

公開日: 更新日:

 時は、徳川綱吉の治世。川越藩領内には、牛馬の飼料や堆肥を作るための草を採取する「まぐさば」と呼ばれる土地があった。周辺には、川越藩領や幕府直轄領、旗本の知行地、小さな領と呼ばれる区域が入り組み、境界線さえ定かでない上に、野銭を払って採取や伐採をするという決まりがあった。

 こうした背景のなか、村同士の争いが長く続き、ついに死者が出るはめに。そんな折、川越藩主となった柳沢吉保は、水も引けないその荒地を「2年で畑地にせよ」という不可能とも思える命を出す。

 果たして、その狙いとは……。

 本書は、現在埼玉県の指定旧跡になっている「三富新田」が農耕に適した肥沃な土地に生まれ変わるまでの苦闘を描いた歴史小説。2017年に埼玉新聞に連載され、加筆修正の上まとめられた。川越に送り込まれた荻生徂徠のもと、自宅と雑木林と耕作地を配置した細長い短冊上の区画内に農民が入植し、土地を作り変えていく姿が描かれている。

 (文藝春秋 1800円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇