「奇説無惨絵条々」谷津矢車著
雲州松平家前当主・松平宗衍は家臣に引退させられ下屋敷で一切の布着用を認めない裸の茶会を催すなどして日々を過ごしていた。
ある日、出入りの播磨屋が女衒(ぜげん)から買った女、幸を連れてきた。奥州の出で、飢饉で全滅した村の生き残りだった。家族全員の死を見ていることしかできなかった幸は、江戸は極楽だという。宗衍は、ここが極楽か否か、己が目で見定めよと言い、裸で仕事をさせるなどして虐待するが、幸は音を上げない。だが、宗衍が幸の美しい背中に幽霊の入れ墨を入れさせると……。(「雲州下屋敷の幽霊」)
古本屋が、狂言の作者・河竹黙阿弥に台本のネタとして5編の戯作を渡すという設定の時代小説5編を収録。
(文藝春秋 1600円+税)