「エネルギーの愉快な発明史」セドリック・カルルほか監修 岩澤雅利訳

公開日: 更新日:

 2019年のノーベル化学賞は、リチウムイオン電池の開発に貢献した吉野彰氏らが受賞した。リチウムイオン電池は、風力や太陽光といった再生可能エネルギーと組み合わせることによって電力網を安定化でき、二酸化炭素排出量も減らすことができるという画期的な発明だ。本書は、エネルギー資源が曲がり角に差し掛かっている現在、過去の独創的な発明を手がかりとして、新たな時代にふさわしいエネルギー利用法を考えようというもの。

 まず最初に登場するのは質量保存の法則で有名な化学者、ラヴォワジエが考案した湯たんぽ式の足温器。部分的な保温として日本のこたつも紹介されている。その他、馬の体重を利用する農業用機械や犬を動力とする三輪車といった愉快な発明も出てくるが、19世紀半ばに考案された水素燃料電池や19世紀末の太陽炉を利用した印刷機など先駆的な発明も満載。

 実在のものだけでなく、葉緑素を体内に取り入れて光合成する人間の可能性なども視野に入れ、エネルギーに関する人類の創造力と想像力の歴史を跡付けていく。リチウムイオン電池もこうした幾多の発明の延長線上に生まれたことがわかる。

(河出書房新社 2400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手