「資源争奪の世界史」平沼光著

公開日: 更新日:

 経済活動を続けるうえで欠かすことのできない資源エネルギー。その主役は、第1次産業革命において蒸気機関の燃料となった石炭や、第2次産業革命で重工業を発展させた石油など、時代によって移り変わってきた。

 そして現在、石油の時代が終焉(しゅうえん)を迎え、脱炭素の動きが加速。太陽光をはじめとする再生可能エネルギーやレアアースに注目が集まっている。本書では、こうした資源の歴史をひもときながら、資源を巡る各国の取り組みや今後の潮流を詳述している。

 石油ショック以降、世界の注目を集めたのが太陽光発電だが、それを牽引してきたのが日本だった。日本の太陽電池メーカーは世界を席巻し、2005年の太陽電池セル(太陽電池素子)の生産量世界シェアでは47%を占め1位に君臨していた。ところが、その2年後には中国と欧州に抜き去られ、日本は3位25%と失速。15年には10位にも入れない落ち込みとなった。その理由のひとつには、太陽電池の原材料であるシリコン原料の調達に失敗したことが挙げられると本書。

 エネルギー転換が加速する中で、今もっとも注目されているのがブルーエコノミーだ。これは、海洋保全と海洋資源の利用を両立させることで社会をサステナブルに発展させる経済活動で、その趣旨はSDGsとも合致している。中でも期待が高まるのが、洋上風力発電や潮力発電、そして海洋温度差発電などによる海洋再生可能エネルギー。そのポテンシャルは、世界のエネルギー需要の最大400%を賄える可能性を秘めているほどだという。

 まだ途上ではあるが、世界各国で開発競争が進んでいる。資源小国の日本にも再びチャンスが巡ってきそうだ。

(日本経済新聞出版 2750円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし