「NHKにっぽん百低山 吉田類の愛する低山30」吉田類著
「NHKにっぽん百低山 吉田類の愛する低山30」吉田類著
夜な夜な酒場を飲み歩いている印象がある著者だが、意外にも若いときから山歩きをこよなく愛してきたという。そんな著者がナビゲーターを務める人気番組の書籍化。
「山高きが故に尊からず」をモットーに掲げ、日本各地の「低山」に登ってきた著者が、これまで踏破した山のなかからおすすめの30座をセレクトして案内してくれる。
北海道の手稲山は、冬はスキー客でにぎわう札幌市民にお馴染みの山。
登り始めてすぐ、道標に導かれるままコースを外れて「乙女の滝」を見学。すると、周囲の朽ちかけた石垣や苔むしたコンクリートが目に付く。
実はこれらは明治時代から昭和初期にかけて栄えた金鉱山の住居跡だという。ゴールドラッシュに沸いた当時、手稲山の木は燃料として伐採され、はげ山となった斜面を利用してスキーのゲレンデが造られたのだそうだ。
そうした山の歴史を肌で感じながら、札幌五輪で大回転のコースにもなった急斜面を息を切らせながらも、標高1023メートル、登山口から山頂まで9キロの登山を楽しむ。
同じく札幌市の中心部から車で20分ほどの藻岩山は、これまで50回以上も登ったという著者の「ホームマウンテン」。
標高531メートルの山頂までロープウエーもあり、誰もが気軽に足を運ぶ山だが、約400種もの植物が自生し、エゾリスや日本最大のキツツキ・クマゲラなど珍しい動物との出合いもある森は、北海道初の天然記念物に指定されたほど豊かである。
以降、東北・秋田の田代岳から、沖縄の名護岳までエリア別に30座。
下山後のお楽しみとして、それぞれの土地の名物料理が楽しめるお店や、著者が登山の際に詠んだ俳句も添えられ、読んで楽しいガイドブック。
さて、涼しくなったら、どこの山に登ろうか。
(NHK出版 1925円)