「酒は人の上に人を造らず」吉田類著
テレビでおなじみの酒場詩人が、各地を訪ね歩く紀行エッセー。
ここ数年、生まれ故郷の高知で酒を飲む機会が増えたという。酒場で見ず知らずの客と乾杯し、すぐその場に馴染んでしまうのは、土佐流の独特の飲酒習慣によって培われたと改めて思う。土佐人の酒宴好きは、平安時代の歌人・紀貫之の「土佐日記」からも読み取れる。その高知で父親と娘姉妹が営む居酒屋での一夜、その脳裏にはハチキンと呼ばれる高知出身のたくましい女性たちとの思い出がよみがえる。
その他、桜が満開の京都から戻った翌朝、高尾山の山中で見知らぬ人から誘われて加わった草上の酒宴、多摩川の河川敷の茶店をはじめさまざまな店の名物女将など、酒が結ぶ人との出会いをつづる。(中央公論新社 760円+税)