巨匠に不満顔で…細野辰興監督“給料全額カット”を語る
それまでも大鍋に豚コマと鳥の手羽先、ジャガイモ、にんじん、たまねぎを放り込んで、カレーや水炊きにして食いつなぎ、1週間の食費を1000円で抑えたりしていたんですけど、そういうこともできない。どうやって食いつないだのか自分でも覚えていません。
唯一考えられるのは、仲間の存在です。パチンコに勝ったとか、ちょっと臨時ボーナスが入ったといっては、その仲間の家に集まり、うまいものを食べたり、酒を酌み交わしたりしていました。時代が明るかったということもあるでしょうね。つらいとか、苦しいという思いはなかった。明日があるさ、良いことが必ずあるさって皆が思っていました。
そうして3カ月余りが経ち、何とか迎えたクランクアップの日。打ち上げでまた今村監督に呼ばれました。黙って封筒を渡され、中を見ると20万円が入っていたんです。まあ、もらうはずの給料をもらっただけですから感謝する必要もないけど、感謝してしまった。さすがイマヘイ、やり方がうまい。
最近の若者のように、あのとき撮影所を逃げ出さなかったのは、やっぱり映画が本当に好きだったから。その思いしかありません。