巨匠に不満顔で…細野辰興監督“給料全額カット”を語る
ところが、「筵(むしろ)を取って来い」と言われ、6トントラックで運転手さんと2人、上司が手配した東北各所を回って帰ると、集めてきたのは菰(こも)だったのです。
「おまえ、自分は間違っていないと思っているんじゃないか」
その夜、監督に呼ばれ、そう言われました。たしかに注文したのは自分じゃないし、発注した上司が間違ったんじゃないか。そもそも筵も菰も大して違わず見分けがつかないじゃないか。いろんな考えが頭の中を巡りました。それで不満げな顔をしていたのでしょうね、監督は僕の目を見て、こう続けたのです。
「現場で確認するべきだった。言われるままやっていたのでは子どもの使いだ」
たしかに、よくよく考えればその通り。でも、頭に血が上っていて、「はいそうでした」とはいかない。それでその上司に給料を全額カットされました。そうなると久我山に借りていた家賃2万~3万円も払えないし、帰る交通費もありませんでした。貯金なんてものもないし、困りましたね。
■どう食いつないだか覚えていません