歴代天皇は「徳を積む」ことにこだわった 昭和天皇の帝王教育はどうだったのか
花園天皇が譲位して後醍醐天皇の時代になると、時の皇太子である甥の量仁親王(のちの光厳天皇)に戒めの書を渡したが、これが「誡太子書」である。
そこには、例えば「徳がないのに王侯の上に居り、功もないのに君臨するというのでは、自分でも恥ずかしくはありませんか……」といった厳しい言葉が並び、皇太子に強く自戒を求めている。要は、徳を積まなければ天皇といえども人民に見放されますよ、という警告である。現在にも通じるということで、天皇陛下は感銘を受けたのだろう。
歴代天皇が皇太子に「訓誡書」を贈っていたようだ。そこには「賞罰を明らかにして愛憎をふりまわしてはいけない」「平等に配慮して好悪にかたよってはいけない」など、人間的感情を捨てて没個性化をすすめている。感情をあらわにすると利用されるからだ。「帝王学」というより処世術のように読めるが、おそらく権力のパワーバランスに立っている天皇家の事情がそうさせたのだろう。
かつての「帝王学」とは、父子相伝のように、天皇が自ら皇太子に教えることだったのだろう。考えてみれば、天皇の苦悩や覚悟は天皇のみぞ知るのだから、当然かもしれない。