市川中車「完全復帰の舞台」とはならず…過剰演技に猿之助の代役・中村壱太郎が引きずられ“夫婦漫才”状態に

公開日: 更新日:

 権太は相手やシチュエーションによって人格が瞬時に変わる。仁左衛門はキャラクターを演じ分けるのではなく、あくまでひとりの男が、愛想よくなったり悪辣になったり、甘えん坊になったり、ずる賢くなる、その変化を見せる。丁寧なので、いつになく、分かりやすい。

■尾上松緑はもう少し身体を絞るべき

 尾上松緑の「川連法眼館」は、音羽屋のひとりとして、持ち役にしたいのは分かるが、これでは無理。團十郎や猿之助による、三代目猿之助(猿翁)のアクロバティックな型で見る機会が多かったせいもあるが、松緑の身のこなしが重いので、興ざめしてしまう。

 宙乗りをしろとは言わないが、もう少し身体を絞って取り組むべきではないか。キツネがタヌキにしか見えない。年長の菊五郎のほうが、もっと軽やかに演じていた。だからこそ、切なさが出る役なのに。

「傾城反魂香」も六代目菊五郎の型と、初代猿之助の型とがあり、今回の中車は猿之助型。同じ演目でも役者の家によって、だいぶ違うことが分かる月だ。

 今月は市川左團次が出るはずだったが、亡くなったので、演目ごと替わってしまった。この名優の死を悼む機会がないのは、どういうことだろう。

(中川右介/作家)

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    もしやり直せるなら、入学しない…暴力に翻弄されたPL学園野球部の事実上の廃部状態に思うこと

  2. 2

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  3. 3

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  4. 4

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???

  5. 5

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  1. 6

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  2. 7

    JLPGA専務理事内定が人知れず“降格”に急転!背景に“不適切発言”疑惑と見え隠れする隠蔽体質

  3. 8

    「俳優座」の精神を反故にした無茶苦茶な日本の文化行政

  4. 9

    (72)寅さんをやり込めた、とっておきの「博さん語録」

  5. 10

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動