市川中車「完全復帰の舞台」とはならず…過剰演技に猿之助の代役・中村壱太郎が引きずられ“夫婦漫才”状態に
激震の歌舞伎界だが、6月の歌舞伎座は、少なくとも表向きは、平穏に淡々と公演が続いている。
猿之助の事件がなければ、昼の部は謹慎状態だった市川中車(香川照之)の完全復帰の舞台として話題になるはずだった。昨年の團十郎襲名披露公演で復帰は果たしていたが、「傾城反魂香」の又平で、主役として歌舞伎座の舞台に立てた。その妻おとくを猿之助が演じる予定だったが、中村壱太郎に代わった。
中車はいつも演技過剰だが、壱太郎もそれに引きずられ、二人で夫婦漫才をしてしまい、場内は笑いに包まれる。狙って笑いを取っているのなら、それはそれで成功しているが、これは喜劇なのだろうか。好き嫌いが分かれるところ。
めったに上演されない「浮世又平住家」の場も上演されている。他に「児雷也」と「扇獅子」。夜の部は、「義経千本桜」の後半で、「木の実」「小金吾討死」「すし屋」と、「川連法眼館」。片岡仁左衛門の権太は歌舞伎座では2013年以来(京都・南座で18年)。「すし屋」だけのことが多いが、仁左衛門は「木の実」からの通しで上演する。ここでの伏線があるから、「すし屋」での一家の悲劇が伝わる。「小金吾討死」では片岡千之助が、キビキビとした立ち回りを見せる。