人間は損失が頭をよぎるとリスクを取る意思決定をしてしまう
人間の意思決定における心理的要因を説明する行動経済学の理論に、「プロスペクト理論」と呼ばれるものがあります。ざっくり言うなら、「人は損失を回避する傾向があり、状況によってその判断が変わる」という理論です。
このロジックを提唱したエイモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンは、生死に関わる状況において、異なる言い回しが被験者の反応にどのような影響を与えるかを調査(1981年)しています。
大きな病気にかかっている600人の人々を対象に行われたこの調査は、次の2つの治療法のどちらを選択するか求めたものでした。
治療法Aは、「600人のうち200人の命が助かる道」と伝え、治療法Bでは、「600人全員が助かるか、全員が助からないかのどちらかである道」と伝えた──。
その結果、被験者は治療法Aを選択する人が多かったといいます。しかし「命が助かる」ではなく、「命が失われる」と言い換えたケース(治療法Aで言えば「600人のうち400人の命が失われる道」)では、治療法B、すなわち、イチかバチかに賭ける人が圧倒的多数だったといいます。