箱根駅伝完全V青学トレーナー直伝!「厚底シューズ」で走る前にやるべきこと
マラソンシーズン真っただ中。正月休みは箱根駅伝を見ながらモチベーションを高め、エントリーした大会に向けて走り込みを続けた人は少なくないだろう。今や市民ランナーも、シューズは厚底が当たり前。そこで、箱根駅伝を総合優勝した青山学院大駅伝チームのフィジカル強化を担当するフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一さんに、厚底シューズを履きこなす極意を聞いた。
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厚底シューズは、ミッドソールに軽量で反発性に優れた素材が使われ、なおかつ主にカーボンプレートが挟み込まれている。着地の時に変形したミッドソール素材が元に戻ろうとする力とプレートのしなりが前へ進む推進力を生み出しタイムが伸びやすいのが特徴だ。
従来の薄底より分厚くてもそれほど重くはないため、2017年の登場以来、トップランナーがレースで使用するのはほぼ厚底で、市民ランナーにも広く普及する。メタボ対策に週2回ほど走る記者もそのひとりだが、厚底を履くようになってから時々、太ももの前の筋肉が張るようになった気がするが……。
「その症状は厚底ならではといえます。薄底と厚底とでは走る時に、より負荷がかかる筋肉が異なり、厚底が登場する前後で故障部位が明らかに違うのです。薄底では、すねの内側の脛骨の骨膜が炎症を起こすシンスプリントや膝の外側が痛む腸脛靱帯炎、足の裏が痛む足底筋膜炎、大腿骨の疲労骨折が代表的でした。しかし厚底では、股関節回りに違和感を覚える人が増加。青学駅伝チームでも、太ももの内転筋やお尻の中臀筋に張りを訴える選手が目立ち、仙骨を疲労骨折する選手もいました」
厚底は、薄底に比べて重心が上がり、反発性とクッション性の強さで、不安定さが増す。そんなシューズを履いて安定したフォームで走るには太ももの大腿四頭筋やお尻の臀筋群の筋力が欠かせないという。なるほど、記者の太ももの前側が痛むのは、厚底によってそこに負荷がかかっている証しだったのか。
「厚底を履きこなして、その特性を十分に生かすには、大腿四頭筋と臀筋群の筋力強化がとても重要なのです」
正しい姿勢をマスターする
では、どんなトレーニングが必要なのか。中野氏は、青学大陸上部監督の原晋氏とともに「青トレ2.0 厚トレ 青学駅伝チームが実践する厚底シューズ対応トレーニング」(徳間書店)を上梓。厚底に対応した体づくりの基本から下肢のトレーニング、ストレッチまで常勝軍団の厚底トレーニング法を余すことなくレクチャーしている。詳細は著書に譲るが、基本を紹介しよう。
「青学駅伝チームでは、バーベルを使いながら高い負荷をかけて下肢を鍛えています。そういうトレーニングを行うには、正しい姿勢をマスターすることが大切です。そのためには、立位体前屈で脊柱の側弯がないか、頭の後ろで手を組んだスクワットで腰椎の前弯がないかをそれぞれ確認してください。高負荷の下肢トレーニングはそれがきちんとできるようになってからです」
写真①と②がそれぞれ立位体前屈とスクワットを示している。どちらもNGのようになっていると、ケガをしやすい。意識しなくてもOKの姿勢になるように、体に覚え込ませよう。
股関節回りの筋肉を強化する
正しい姿勢をキープできるようになったら、下肢トレーニングの中心はスクワットだ。
「骨盤の前傾と腰椎の前弯を維持しながら、腰を落とします。太ももが床と平行になるように、なおかつ膝がつま先より前に出ないようにするのが正しいスクワットです。スクワットは簡単なようで、意外と正しくできていない人が多い」
脊柱が後弯して頭が前に出る、脊柱が真っすぐ立って反り腰気味になる、おじぎのように前かがみになる、膝が内側(ニーイン)に入る、といった姿勢はすべてNG。いずれもケガの原因で、中でもニーインは、知らず知らずのうちにやっていることがあるので、姿見などでチェックしよう。
タオルでスクワットの姿勢チェック
スクワットが正しくできているかどうかを確認する方法があるという。そのやり方を紹介したのが写真③だ。
スクワットを行う前、タオルの両端を持って立つ。タオルを股関節に当て、挟み込むように腰を落としていく。前述した太ももと膝の位置に注意しながら、自分なりに正しいと思うところまで腰を落とした時、タオルを引っ張って簡単に抜けないかチェックする。タオルがするすると抜けずにしっかりと挟み込めていればOK。正しい姿勢のスクワットだ。
トレーナーにメニューを組んでもらうと尚良い
著書では、すべてのメニューを紹介するが、どれが必要かは一人一人異なる。ジムなどでトレーナーに筋力バランスをチェックしてもらい、メニューを組んでもらうとよいという。
最後に厚底と薄底の使い分けを。薄底がベターのこともあるそうだ。
「整地されていない道路やぬれた路面は薄底です。また、いつもより距離を延ばす、スピードを速くするといったより強いメニューで走る時も薄底で練習すること。厚底と薄底を使い分けながら、トレーニングを積み、厚底でレースに臨むと、後半のバテそうなところでも、落ち込みを最小限に食い止められます」
さあ、厚トレで記録更新だ。