「円高は株安のジンクス」…調べたら歴史的な根拠は希薄だった
アベノミクスのリフレ政策によって為替が円高から円安に転じ、それにつれて低迷していた株価が大幅に上昇したこともあり、一般的には、「円安は株高」「円高は株安」と考えられている。だが、果たして本当なのか、為替と株価の関係を歴史的に検証してみたい。
事実上の変動相場制が始まった1972年から2023年までの52年間を振り返ると、年間(年初から年末まで)に「5%超の円安」となった年は17回(年)で、日経平均株価の平均騰落率は年率+7.87%。一方、「5%超の円高」となった年は28回で、日経平均の平均騰落率は年率+2.77%だった。
ちなみに、この52年間の平均騰落率は年率+7.54%だ。つまり、為替と株価の関係について、「円安は株高」と言うのは少し大げさで「円安では株価上昇は平均より若干高め」にすぎず、また「円高は株安」ではなく、「円高では株価は大して上がらない」というのが本当のところだろう。
この52年間をもう少し詳しく見てみると面白いことが分かる。株価が大幅下落した年、すなわち①1990年の「バブル崩壊」(年間のドル・円の為替は5.60円の円高、日経平均の年間騰落率は-38.72%)②2008年の「リーマン・ショック」(同18.79円の円高、同-42.12%)③11年の「東日本大震災」(同5.19円の円高、同-17.34%)と、これらすべての年で為替が「5%超の円高」だった。そうしたこともあって、「円高が進行し株価が大暴落した」という強烈な印象が、投資家に「円高は株安」のイメージを植えつけたのではないだろうか。