最高齢で幕内返り咲き 安美錦“満身創痍”でも息長い理由
「不死鳥のごとく蘇った」と言ったら言い過ぎか。
30日の11月新番付発表で、安美錦(39)が8場所ぶりに幕内に返り咲いた。39歳での幕内復帰は、38歳6カ月の土佐ノ海(現立川親方)を抜き、昭和以降最年長の記録だ。
伊勢ケ浜部屋で行われた記者会見では、「会見といえば、もう引退会見しかないと思っていた」と言って、顔をほころばせたベテランだが、その体はすでにボロボロだ。両ヒザに爆弾を抱え、分厚いサポーターなしでは土俵に上がれない。昨年5月場所では左アキレス腱断裂の大ケガを負った。当時は誰もが角界きっての業師の引退を確信していたほどだ。
ある親方が言う。
「満身創痍の安美錦がそれでも勝てるのは、卓越した相撲センスと言うほかない。相手が下がれば前に出て、相手が前に出てくれば変化でかわす。変幻自在の相撲は、かねて『ケガさえなければ大関も狙えたのに……』と言われていたからね。昨年のアキレス腱断裂で引退してもおかしくなかったが、『弟弟子の横綱・日馬富士の露払いを、もう一度やってあげたい』という気持ちがあったのかもしれない。横綱土俵入りの露払いや太刀持ちは、幕内力士にしか許されていないからね」