来春センバツ甲子園の主役候補「スーパ高校1年生」3人の強みと弱み
佐々木麟太郎(花巻東・内野手)
大阪桐蔭(近畿・大阪)が制した明治神宮大会は、花巻東(東北・岩手)の佐々木麟太郎内野手が2本塁打を含む10打数6安打9打点と大暴れ。高校通算本塁打を「49」に伸ばすなど、1年生の台頭が目立った。出場が確実視される来春のセンバツ甲子園でも主役になりそうな「スーパー1年生3人」を掘り下げた。
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■「人の話が聞ける素直な性格な子は伸びる」
怪物1年生は11月27日に横浜と練習試合を行った。現在は古巣・横浜で臨時コーチを務める元部長の小倉清一郎氏がこう明かす。
「ダブルヘッダー2試合で8打数2安打だったかな。本塁打性の弾丸ライナーがあったけどファウルになった。バックスイングの際に前の右肩が下がり、ギッタンバッコンするから、やっぱりインコースは詰まる。守備では牽制の際に投手に正対して構えているから、一、二塁間の守備範囲が狭くなる。半身で構えるようにと、1試合目が終わった時にアドバイスをしたら、目をキラキラさせて聞いてくれました」
横浜OBの筒香(パイレーツ)の話もしたという。小倉氏が続ける。
「筒香は、腰を痛めた影響もあって50試合ほど欠場したから、高校通算は69本止まりだった。ケガをしなかったら100本は打っていた。佐々木君に『今のままの体重(117キロ)じゃ、膝をケガして練習ができなくなったら野球生命が終わっちゃうよ。だから、せめてあと10キロちょっと、105キロまで減量しないと。そうしたら三塁も守れるよ』ってアドバイスしたら、『分かりました』と即答。さすが(花巻東)佐々木監督の長男だけあって、しっかり教育されている。2試合目が終わると、私の所に走って来て『ありがとうございました』と実に礼儀正しかった。人の話が聞ける素直な性格な子は伸びますから」
プロのスカウトは「スイングの間の取り方、軌道がいい。中学時代に大谷翔平のお父さんに教わっている経歴も話題性十分。ただ、さすがに体が重過ぎるので、腰がキュッと回らないところがある。まだ150キロ級のインコースには対応できないでしょう。それと、日本ハムの清宮が苦労しているように、守れるのが一塁だけというのは今後、選択肢が少なくなってしまう可能性がある。これから三塁や外野にも挑戦してほしいから、ある程度の減量は必要になるでしょうね」と小倉氏同様の課題を指摘した。
なお、11月28日の東海大相模との練習試合で通算50号を放った。
前田悠伍(大阪桐蔭・投手)
「来年のドラフトでも上位候補ですよ」
プロがこう評する左腕の全国デビューは衝撃的だった。明治神宮大会は全3試合に登板。初戦の敦賀気比(北信越・福井)戦で2番手としてリリーフ。6回を投げて2安打無失点10奪三振の力投で圧巻の全国デビューを果たすと、準決勝の九州国際大付(九州・福岡)戦は7回4安打2失点7奪三振。広陵(中国・広島)との決勝も5番手として試合を締めた。背番号は14ながら、実質的なエースとして君臨している。
■1年生ながら「勝てる左腕」
179センチ、75キロ。スリムな体形から投じる直球の最速は145キロ。冒頭のスカウトは「まだ線が細いけど、球に角度があってキレがある。現段階ですでに大阪桐蔭の何人かの2年生投手より上とみています」と言えば、別のスカウトも「強いスピンの利いたストレート、両サイドに投げ分ける制球力、スライダー、カーブ、チェンジアップなど変化球の精度も高い。マウンド度胸もあって、1年生ながら勝てる投手なのが評価できます」。
前田は、花巻東の佐々木麟について「同じ1年生なので対戦したら負けていられない」との対抗意識をむき出しにする。来春のセンバツで対決が実現するか。
真鍋慧(広陵・内野手)
佐々木麟と同じ左の長距離砲。こちらも189センチ、88キロの堂々たる体格を誇り、ニックネームは「ボンズ」だ。メジャー歴代1位の762本塁打の記録を持つバリー・ボンズを彷彿とさせる破壊力から、中井監督が名付けた。
中学時代から、水で重量を増やせるバットで振り込んできた。スイングスピードは驚異の150キロ。普通の高校生は120キロほどだというからケタ違いである。秋の広島大会の途中から4番を任されている。
■兄の広島商ではなく広陵に進んだ理由
4つ上の兄・駿さん(20)は広島商OBで、現在は法大野球部に所属。高校で主将を務めた兄の広島商ではなく、広陵に進んだ理由は「日本一を目指したいから」。駿さんが2019年夏の甲子園2回戦で敗れた岡山学芸館を中国大会準決勝で破り、センバツ出場を確実にした。
プロのスカウトは「スイングスピードが速く、フォロースルーが大きい。タイミングの取り方もいいので変化球にも対応できる」と太鼓判。
「ポジションが一塁なので、三塁、外野をやってくれれば、もっと魅力が出てくる」と佐々木麟と同じ課題を挙げた。