熱闘甲子園で異変!強豪校が片っ端から早期敗退の謎を解く…大阪桐蔭だけじゃない相次ぐ序盤の番狂わせ
飛ばないバットの導入は「公立校に有利」とキッパリ
バッタバッタと倒れていく甲子園常連校。横浜高の元部長・小倉清一郎氏は「今春から導入された(低反発の)飛ばないバットの影響が大きい」とこう解説する。
「打球が飛ばないから、投手は強豪校の強力打線を相手にしても、高めに直球を投げ込みやすい。そのうえで、低めに落ちる変化球を投げ分けることができれば、内野ゴロが増える。内野手の守備力を固めれば、強豪校と勝負できる状況になっている。最近の流れで強豪校は『フライボール革命』といってアッパースイングになりがちだが、飛ばないバットにこのスイングは合わない。今のバットは打撃の基本通り、センター返しをしないと安打になりにくいし、打線がつながらない。実際、大阪桐蔭を粉砕した小松大谷の安打は、9本中センターから逆方向へ8安打。この日の大阪桐蔭はそうでもなかったが、長打力のある強豪校ほどバットを振り回して引っ張る傾向がある。これが足をすくわれる原因ではないか」
大阪桐蔭を完封した小松大谷の西川は、低反発バットの導入は「自分にはラッキーだと思った」とニヤリ。初出場で甲子園初勝利を挙げた公立校・石橋(栃木)の福田博之監督は、飛ばないバットの導入は「公立校に有利」とキッパリとこう言った。
「距離を飛ばすというのは才能の面が大きい。でも、低く強い打球を飛ばすこととか、ボールを見極めることは、努力でうまくなる。短い練習時間でも集中力で補える」
明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督は鳥取城北との初戦に勝利した後、「一塁に走者を置いて右中間や左中間に打球を飛ばすことは期待できなくなった。二塁に確実に送ることがより大切になっている」と送りバントの重要性を強調した。前出の小倉氏が続ける。
「そうでなくても、今は延長に入ると、無死一、二塁のタイブレークになる。間違いなく送りバントの重要性は増していて、昔の野球に回帰しているのに、明らかにバントが下手になっている。智弁和歌山はスリーバント失敗が何度もあって好機をつぶしていた。強打のチームほどバントの練習量が少ない気がする。同じ強豪校でも、犠打を重視する馬淵監督の明徳はさすがでしたが……」
新バットの影響で、強豪校によるパワープレーが減り、どこが優勝してもおかしくない大混戦になっているようだ。