沢田研二
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劇的にかっこいい!1983年には「早過ぎた1曲」にKOされた
チューリップが1976年にリリースした、ビートルズのカバーアルバムのタイトルは「すべて君たちのせいさ All Because Of You Guys」(余談ながらチューリップの財津和夫と沢田研二は2人とも48年生まれ)。 こ...
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ムソリーニの孫娘アレッサンドラ作詞のバラード歌唱がずぬけている
アルバムとして全体をあらためて聴き込むと、やはり企画物ということだろうか、オリジナルアルバムとは違い、食い足りなさが残るのが正直なところである。 特に、当時の時代を代表する女性たちが書いた歌詞と、沢田研二の作るメロディーが合...
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「翔んでる女」から「渋谷系」に補助線が引ける不思議なアルバム
まったくもって不思議なアルバムである。 全曲の作曲は沢田研二、全曲の演奏はエキゾティクス、全曲の編曲はエキゾティクスのメンバー(吉田建、柴山和彦、西平彰)。ここまでは想定の範囲内だが、作詞陣がまさに想定の範囲外。 1...
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湯川れい子の歌詞はザ・タイガースのメンバーやファンを強く意識している
作詞は湯川れい子。1980年にシャネルズ「ランナウェイ」、81年に松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」、84年にアン・ルイス「六本木心中」(編曲は伊藤銀次)、85年に小林明子「恋におちて-Fall in love-」と作詞家として...
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テクノポップな響きは、今聴いてもかなり魅力的だ
冒頭を聴いているとC-C-Bの「Romanticが止まらない」(1985年)かと思ってしまうテクノポップな響き。そして多くの人は思うだろう──「ザ・タイガースにこんなシングルあったっけ?」 そう、率直にいえば売れなかった。売...
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陽水があの柔らかい声で一言だけ…人生屈指の威圧感が虚脱感に変わった
今回は、いきなり余談から。 前回書きかけた、2019年春の井上陽水のコンサート(東京国際フォーラム)に、ご招待されたときの話の続き。 繰り返しになるが、そもそも私なんかが招待していただいたのは、私とマキタスポーツが出...
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実にゆったりと楽そうに歌っている感じがする
シングルが発売された1983年元日時点で「背中まで45分」のバージョンは3つあった。 1つはもちろん、その日発売された、沢田研二のニューシングル。2つ目は、すでにご紹介した前年12月10日発売の「MIS CAST.」収録バー...
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「陽水」が広くまかれた環境で発売されていたら、もっと売れたのでは?
実験的な曲、そして「特区」のような曲だと前回書いた。 ただ、フォローするわけではないものの、1983年新年早々、この井上陽水の作詞・作曲による「特区」ソングを、高1の身で初めて聴いたときには、とにかく唖然としたものだが、今聴...
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新年早々に初めて聴いたとき、口をポカンと開けましておめでとうになってしまった
1983年=昭和58年が明けた。 街は映画「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」で盛り上がっている。この作品に、動物園のチンパンジー飼育係として働く三郎を演じたのが沢田研二、そしてマドンナは田中裕子だった。 この作品は最終...
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「1983年の沢田研二」は一筋縄ではいかない年。冷静に迫っていきたい
連載タイトルの年代表記「1980-1985」を2つに分けると、前半が「1980-1982」、後半が「1983-1985」ということになる。 つまりここで連載が後半に入る。おそらく多くの方が予感しているように後半は、前半の派手...
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萩原健一(2)「相手は美人の国際スター、チャンスよ」
ショーケンの「ザ・テンプターズ」は1970年に解散して、沢田研二の「ザ・タイガース」のメンバーと「PYG(ピッグ)」を結成するが、ショーケンとジュリーの互いのファンが相殺したためうまくいかず、わずか1年で解散する。 その頃テ...
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ずぬけたロックンロールに艶やかな歌詞が「ジャスト フィット」
このアルバムの中で、個人的にもっともお気に入りで、何度も何度も聴いた曲、といえば「ジャスト フィット」に他ならない。「そうそう、私も」という人も多いのではないか。井上陽水バージョンでも知られ、彼のファンの中でも認知度が高い一曲である...
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井上陽水にしか書けない「ナンセンス・ダンディー」の世界
「意欲作」だ。「問題作」と言い換えてもいい。 「MIS CAST.」というタイトルからして意味深。このアルバム全曲の作詞・作曲を担当した井上陽水が「ミスキャスト」かどうかを問うているような感じがするからだ。 アルバムへの...
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三浦徳子の挑戦的な歌詞が30代の「ヤバい僕」を演出することに成功した
作曲=西平彰、編曲=白井良明という新作家陣に触発されたのだろうか。三浦徳子の歌詞も、かなり挑戦的なものとなっている。 歌われるのは、自分を愛してくれる女性がいるにもかかわらず「眠れない」「生きてない」、つまり満足できないとい...
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聴き手の度肝を抜くイントロなど、編曲・白井良明の手腕が素晴らしい
前々回書いた、この曲が聴き手に与える「どないなってんねん?」という印象は、多分に編曲家・白井良明の手腕によるところが大きい。 いきなり聴き手の度肝を抜くのがイントロである(一般的にイントロは編曲家に委ねられる)。 実...
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この曲の注目は作曲・西平彰が凝ったBメロの不思議な感覚
前回も述べたように、作曲は、この連載的には「4人目のエキゾティクス」=キーボーディストの西平彰。 リアルタイムの私は当然、西平彰という存在を知らない。その後、佐野元春を聴き出したのだが、当時の彼のバックバンド「ハートランド」...
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「どないなってんねん?」初めて聴いたとき、耽美退廃路線にのけ反った
「おいおい、どないなってんねん?」──白状すれば、当時、大阪の高校生にとっては、初めて聴いたときに、そう言いたくなる曲だった。 ジャケットをあらためて見つめる。何かの制服のようなコスチュームに身を包み、アコーディオンを下げて、...
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「STOP WEDDING BELL」のシャウトは必見
前回書いたように、ロックンローラーとしての沢田研二を尊重する立場からいえば、個別楽曲では、3曲目の「STOP WEDDING BELL」とラストの「素肌に星を散りばめて」が好みである。 先に後者について触れておくと、作詞は売...
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「日本人がもっとも小ぎれいだった時代」を反映したサウンド
1982年6月発売、約1年ぶりのオリジナルアルバムとなる。今回はロンドンではなく国内での録音(サウンド・シティ・スタジオ)。 全体を通して「都会的」とか「洗練」などの言葉が浮かんでくる作品だ。 私は82年を「日本人が...
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カップリング曲『ZOKKON』の歌詞に見て取れる佐野元春の影響の断片
この時期の沢田研二のシングルは、カップリング(B面/2面)のレベルも高く、元々はA面候補だったのかもしれないと思わせる出来である。 「渚のラブレター」のカップリング「バイバイジェラシー」や、「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」の「ジャン...
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イントロと歌い出しで不思議に耳に残る9th(ナインス)音のテクニック
沢田研二と佐野元春と大沢(現=大澤)誉志幸と伊藤銀次が、もし一緒に歌ったら──。 そんな豪華な組み合わせのコーラスがごくごく簡単に聴けるのである、「おまえにチェックイン」のイントロで。 この曲の編曲も担当した伊藤銀次...
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大沢誉志幸という巨大な才能を世に押し出した…この曲の最大のトピックだ
「おまえにチェックイン」というシングルの、ある意味、最大のトピックは、大沢(現=大澤)誉志幸という才能を世に出したことではないか。 大沢誉志幸は当時、渡辺プロダクション所属だったので、言ってみれば、沢田研二の内輪。クラウディ・...
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血が騒ぎ出すアメリカンな陽性ロックンロール路線
1982年も5月になった。 余談の多い連載だが、今回はいきなり余談。「おまえにチェックイン」の発売日は5月1日なのだが、同じ日に「スローモーション」というタイトルのシングルも発売されている。そう、この82年5月1日は、中森明...
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タイガースはアマチュア時代、スパイダースのファンクラブに入っていた
いくつか補足を。 この曲、ギターソロがいかにも唐突である。ニューウェーブ感のあるロックサウンドの中で、突然スパニッシュ風のアコースティックギターがソロを担当するのだから。 これには理由があった。はい、また出ました。本...
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この曲のMVPは岸部シロー 難なくこなす超絶高音ロングトーンが凄まじい
作曲はメンバーの森本太郎で、リードボーカルは沢田研二と加橋かつみで分け合っている。 テレビなどに出たときは、センターが沢田研二ではなく加橋かつみで、沢田は加橋の右側のポジションだった。 このあたりにも、「同窓会」プロ...
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「色つき」ちゅうのが…“意識高い系”だった母親の苦言にあえて反論する
作詞は前作「十年ロマンス」に続いて阿久悠。 「この『色つき』ちゅうのが嫌やなぁ」──当時、テレビで歌っているザ・タイガースを見て、私の母親が放った印象的な一言である。私の母親は中学校の社会科の教師。今で言う「意識高い系」の女性...
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メンバー5人がCMに登場する「直接的タイアップ」が最大のヒットに貢献した
今年もよろしくお願いします。 さて、ザ・タイガースのこのシングル。すでに何度か触れているが、1980年から85年における、沢田研二(「同窓会」ザ・タイガース含む)のシングルで、もっとも高い売上枚数を記録したものである。 ...
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【年末特別企画】連載前半総括「レコード大賞」を発表! 作詞・作曲・編曲・歌唱…そして大賞は?
「週4日、ほぼ毎日かよ、書けるのか?」と思いながら始まったこの連載も、今年は本稿で終わり。いよいよ前半戦が終了。折り返し地点に差し掛かりました。 進んだのは、ザ・タイガースのアルバム「THE TIGERS 1982」まで。 ...
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自分たちの作るメロディーを歌うと決めた事実が、アルバムの価値を押し上げる
作詞陣の多様さ、言い換えればバラバラさも、アルバムとしての統一感を見えにくくしている。 阿久悠、橋本淳、山川啓介、加橋かつみ、糸井重里、山上路夫、近田春夫、安井かずみ、小泉長一郎、滝御夏子──。 グループサウンズ(G...
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世界最先端にニュー・ロマンティックなサウンドが、普通にお茶の間に流れていた驚き
「麗人」という漢字2文字のタイトル。日の丸や日章旗を使った、まるで海外から見た(ヘンテコな)日本像をモチーフにしたジャケット。ウルトラヴォックスのような激しいギターのコードストローク。楽曲全体に漂うエレクトロなテイスト。そして何といっ...