将棋界を斬る 田丸昇九段の眼
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三浦九段と神谷八段の明暗分けた 大事な一戦での見過ごし
3月2日のA級順位戦の最終11回戦では、何と6人の棋士が6勝4敗の同成績で並ぶ結果となった。そして、史上最多の6者プレーオフの勝負で、羽生善治竜王(47)が勝ち上がって名人戦の挑戦権を得た。 …
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里見香奈さん初の女性棋士ならず 出雲のイナズマでも壁高く
棋士になるには、奨励会(棋士養成機関)に入会して四段に昇段するのが条件。これまでに「女性棋士」は誕生していないが、「歌舞伎」のように女子禁制ではない。10人以上の女性が奨励会で修業してきた。 …
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女流棋界を盛り上げた レジェンド蛸島彰子が明るく引退
現役の女流棋士で最高齢の蛸島彰子女流六段(72)が、2月16日の対局で敗れて引退した。 実は、女流棋界には年間成績が悪いと「降級点」に該当する制度があり、累積すると年齢にかかわらず引退となる…
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「杉本×藤井」で思い出した 私の“ほろにが”師弟対決の記憶
将棋の公式戦で師匠と弟子が対局することは珍しくない。 その最たる例は1969(昭和44)年の名人戦で、師匠の大山康晴名人(当時46)に弟子の有吉道夫八段(同33)が挑戦したものだ。当初は師弟…
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あと1勝が勝てない…「将棋界の一番長い日」
A級順位戦の最終日は「将棋界の一番長い日」と呼ばれる。名人戦の挑戦者争い、一流棋士の証しであるA級の地位を守る残留争いが、大いに注目される。 今年は3月2日に最終11回戦の5局が一斉に行われ…
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羽生竜王に勝った藤井五段は“35キロ地点”から独走だった
朝日杯将棋オープン戦の準決勝で、羽生善治竜王(47)と藤井聡太五段(15)の対局が2月17日に公開で行われた。 昨年に非公式戦で対局した両者(成績は1勝1敗)は、本局が初の公式戦となった(持…
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青春に目覚めて将棋に身が入らなかった20歳の頃の私
1972(昭和47)年2月22日。私が四段に昇段して晴れて棋士になった記念日である。 現行の奨励会(棋士養成機関)の四段昇段制度は、半年ごとに行われる三段リーグで上位2人が四段に昇段できる(…
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「命がけの勝負や」と阪田三吉が語った南禅寺対局の結末
1936(昭和11)年12月、読売新聞は「待望の巨人今ぞ起つ!」という見出しで社告を掲載した。伝説の棋士・阪田三吉(当時66)が長い沈黙を破って、木村義雄八段(同31)と対局することになったのだ。…
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元草履職人の棋士・阪田三吉八段「南禅寺決戦」の経緯
1921(大正10)年1月、小野五平・十二世名人が89歳で亡くなった。 昔は「終身名人」の制度だった。次の名人と目されていた関根金次郎八段(当時52)は、小野が長命だったので最盛期をすでに過…
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映画「王将」のモデルにも 伝説の棋士・阪田三吉の生涯
写真は、伝説の棋士として知られる阪田三吉(贈名人・王将)。 映画や芝居で表題となった「王将」の主人公だ。阪東妻三郎、森繁久弥、三国連太郎、勝新太郎らの名優が演じた。 阪田は1870(…
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“競技場勝負”に持ち込めば藤井聡太四段にも勝機あり
羽生善治竜王(47)の就位式が今月16日に都内ホテルで盛大に開催された。それに先立って、羽生竜王と竜王戦の6組で優勝した藤井聡太四段(15)の共同記者会見が行われた。 主催者が注目度の高さか…
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70歳現役最年長の桐山清澄九段 「通算1000勝」への奮闘
写真は、私が40年以上前に撮った桐山清澄九段(70)。髪形はだいぶ変わっているが、柔和な表情は昔のままである。 加藤一二三・九段(78)、森ケイ二・九段(71)らの高齢棋士が昨年に引退し、桐…
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15歳の少年の影響で将棋界に地殻変動が起きそうな予感
昨年の将棋界は、最年少棋士の藤井聡太四段(15)が達成した29連勝の新記録が日本中で注目され、「藤井フィーバー」が巻き起こった。その影響で将棋人気が高まっている。 それを象徴するように、元日…
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子どもも参加で大盛り上がり 新年恒例の「指し初め式」
将棋界では新年の1月5日、恒例の「指し初め式」が東西の将棋会館で行われる。 東京ではそれに先立ち、千駄ケ谷の将棋会館の向かいの鳩森神社の境内に設置されている、「将棋堂」(写真左)の前で祈願祭…
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ラジオから流れる村田英雄「王将」を聴いて将棋を始めた
公式戦の年末の対局は、通常は12月28日ごろが最後である。時には対局日程が詰まって大晦日に及んだこともあった。 1991(平成3)年12月31日。王将戦の挑戦者決定戦で、中原誠名人(当時44…
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羽生善治は食卓でも将棋の思考 家族は「宇宙に行ってる」
私は、一流棋士の証しはタイトル戦に登場することだと思っている。 162人の現役棋士(今年12月時点)で、それに該当するのは24%の40人。その中でタイトルを獲得したことがある棋士は25人だ。…
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竜王戦で様変わり 「常識を覆す攻め」の羽生に一体何が?
羽生善治棋聖(47)は8月から9月までの公式戦で6勝9敗と負け越した。一時的な成績不振とはいえ、将棋の内容に異変が感じられた。 菅井竜也七段(25)との王位戦7番勝負では、菅井が独自の工夫を…
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勝率トップ8割3分7厘も藤井四段には「通過点」にすぎない
藤井聡太四段(15)は昨年12月のデビュー戦以来、負けなしで連勝街道を驀進していった。そして今 年6月26日に竜王戦で増田康宏四段(20)に勝ち、29連勝の新記録を達成した。7月2日に竜王戦…
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前代未聞の 1975年に行われた「土俵上」でのタイトル戦
江戸時代には将棋の家元の棋士たちが江戸城に参上し、将軍の御前で対局を披露する「御城将棋」が恒例行事だった。8代将軍徳川吉宗の時世には、その式日が11月17日と定められた。 日本将棋連盟はそん…
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私たち将棋棋士が存在するのも徳川家康のおかげ
将棋の起源は古代インドの「チャトランガ」というすごろくのようなゲームだった。 それがヨーロッパに渡って「チェス」が生まれた。日本には中国や東南アジアを経て8世紀ごろに伝わり、日本の「将棋」が…