日雇い絵描きの愉しみ
-
実家の店の掲載をめぐり「板ばさみ」となった情報誌の仕事
11年前から郷里の北九州市が発行する「雲のうえ」という情報誌の制作をしていて、その取材のために帰省をする。仕事とはいえ郷里に帰れるのはやはりうれしく、両親や弟、旧友とも会うのを楽しみにしている。僕の…
-
民謡の演奏旅行で協賛金を集めるために作った「チラシ」
公民館のような場所に町や村の人たちと集って、一緒に座布団にあぐらをかいて民謡を聴き、酒を飲む。ただそのためだけに民謡の演奏旅行を企画したことがあった。そういう懐かしい日本の景色に憧れがあったのかもし…
-
福光屋の限定酒「福正宗 酒歳時記」のラベルに込めた思い
金沢の福光屋という酒蔵の酒のラベルの絵を描くようになって7年になる。酒は好きで、あればあるだけ飲みたいと思うが、そのラベルを描くとなると、ただ浮かれてばかりはいられない。 福光屋の創業は16…
-
赤井さんが編集した本 著者が放射能汚染に抗ってきた記録
編集者の赤井茂樹さんは僕より10歳くらい年上だろうか、そういえばきちんと年を尋ねたことがない。出版の仕事を通じて知り合ったが、いつしか一緒に酒場へ行くようになった。飲んでいる間はだいたい赤井さんが話…
-
日田市の友人にいただいた竹の子で楽しむ「竹の子リレー」
大分県日田市で食堂を営んでいる佐々木さんご夫妻から竹の子が届いた。佐々木さんとは日田市で一緒に林業を応援する活動をしているのだが、折にふれて地元のおいしいものを送ってくださる。すでに下茹でされている…
-
知られざる温泉観光地「下諏訪」の源泉かけ流しの宿と酒
下諏訪(長野)に住んでいる友人が、地元にいい温泉宿があるというので出かけて行く。下諏訪では7年に1度、男たちが丸太にまたがって命がけで山を滑り降りる御柱祭があってにぎわうが、その日を除くと実に静かな…
-
年に1度のぜいたく旅で訪れた「軽井沢」の歴史あるホテル
毎月貯金をして、年に1度、結婚記念日の前後に妻と旅行をすることにしている。この旅行では、普段使うことのないちょっとぜいたくな宿に泊まるのを楽しみにしていて、今年は、明治時代にそれまで宿場町だった軽井…
-
宇宙空間に浮かんで音を浴びているように感じた「MRI」
ときどき左手がしびれることがあり、気になっていたので、家の近くの整形外科でMRIを撮ることにした。ご存じの方も多いと思うが、細長い穴のなかで体内の様子を鮮明に撮影する大型の医療機器である。僕は初めて…
-
手書きのガイドマップ「小倉の酒場案内」で友人に薦める店
出張や旅行などで、僕の郷里の小倉へ行く友人からおすすめの酒場を聞かれることが多いので、手書きのガイドマップを一枚作って、それをメールで送るようになった。かなり自分の趣味に偏っているので、後で「良い店…
-
ケンカ両成敗の父がいつも地面に描いた「2つの丸い円」
私には1歳年下の弟がいて、幼少の頃の遊び相手といえば、もっぱらこの弟だった。ひと頃、粘土遊びに夢中になり、戦艦を作って戦わせていた。男の子というのは、なんでも戦わせないと気がすまない。 「敵艦…
-
もつ焼き屋で泥酔し電車を「振り子」のように往復した
家の居間にゼンマイ式の柱時計がある。昔、古道具屋で買ってきたものだが、時間はほとんど狂うことがない。いつ見てもカチカチと小さな音をたてて丸い振り子をゆっくりと左右に揺らしている。そして3時になれば3…
-
寒い夜には小鍋で酒を 七輪の小さな火でコトコトとやる
寒い夜に、小鍋で肉を煮ながら酒を飲む。なにもかも忘れてボンヤリと。こういうとき、しみじみ酒はうまいなと思う。これには、やはり安酒場で湯豆腐を頼んだときに出てくる、あの紙風船のような薄っぺらいアルミの…
-
上野の不忍池 景観を保つため男が枯れたハスを引き上げる
2月の土曜日、朝から電車に乗って上野へスケッチに出かける。JR上野駅の中央改札口の三角天井には、猪熊弦一郎の大壁画がある。東北への玄関口だからだろう、秋田犬や岩手の馬、露天の温泉などが描かれてある。…
-
パン屋のロゴマーク制作で「カメとメロンパン」に苦労し…
昨年の夏、秋田市内に開店する「亀の町ベーカリー」というパン屋からロゴマークの絵の制作依頼があった。依頼を受けて、僕は小麦をこねる木製の麺棒やコック帽をかぶったパン職人など、いくつかの絵の案を描いた。…
-
「雪かき」したあとに食べる 雪の中に埋めた蜜柑のうまさ
「ちょっと体動かしてくるか」 炬燵に足を入れて寝ていた義父がむっくりと体を起こすと、言った。 「雪かきですか」 「ちょっとやってくる」 「僕もやります」 「いや、無理し…
-
津軽海峡<3>北海道の雪景色をたっぷり楽しむ「ひとり旅」
北海道の岩見沢での仕事を終え、青森まで鉄道の旅をする。目的地は、青森駅のそばにある「カミヤ」という、もつ焼き屋。しかし、それ以上に、列車で雪の北海道を鉄道で旅することが楽しみだった。午前11時発の特…
-
津軽海峡<2>苫小牧へ向かうフェリーの船室で目が覚めて
八戸で酔いつぶれて、目を覚ますと苫小牧へ向かうフェリーの船室にいた。僕はジャケットを着て、長靴をベッドの外へ投げ出した格好のまま寝ていた。時計を見ると、夜中の1時半である。さて、ゆうべはここまでどう…
-
津軽海峡<1> 年明けの八戸で飲んだ「ひや酒」にのまれ…
年明け早々に、北海道への出張があって、八戸から苫小牧までフェリーで海を渡ることにする。八戸港のある本八戸駅のそばに、行ってみたい酒場が2つあった。1つは、昭和の面影を残す「宝来食堂」。もう1軒は、「…
-
今は亡き友人鈴木るみこさんの思い出を共有する「クヌギ」
生活雑誌から台所特集の取材を受けたことがあった。自宅の台所や調理器具を紹介して、いくつか料理をこしらえるという内容だった。依頼主のライターである鈴木るみこさんは古い友人で、一緒に飲み歩く仲だった。 …
-
マダガスカルで「番犬」に追われて崖から飛び降りた思い出
まだ5つか6つの頃だった。ある日、家の近くの肉屋の裏口でロックという名の黄土色の大きな番犬が餌を食べているのをしゃがんで見ていた。ロックは横目で僕を見て、今にも飛びかかってきそうな恐ろしいうなり声を…