日雇い絵描きの愉しみ
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白髪を逆立てたような霜柱が長く伸びて光る「武蔵野の冬」
いよいよ冬を感じる頃になると、玉川上水の木立にはクヌギやコナラの枯れ葉が降り積もる。枯れ葉や小枝がクモの巣にかかり、まるで宙に浮いているようで不思議だ。僕は自然が作り出したこの景色を朝の散歩のときに…
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宇奈月温泉の近くにある「田舎の酒場」の風景に見惚れた
富山の宇奈月温泉近くの念興寺で行われた「ぶっく寺す」という青空古本市に参加してきた。 イベントの主催者である住職夫妻とは友人で、打ち上げは、田んぼの中に一軒だけぽつんと明かりをともした住職行…
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「きりたんぽ鍋」は秋田・三関産のセリを入れてひと煮立ち
秋田駅そばの市民市場の近くに、少し前まで「なかや商店」という金物屋があった。このお店のおばあちゃんが話す秋田弁は半分くらいしか意味がわからなかったが、その発音はとても美しかった。僕は、そこで土産に買…
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年老いた両親にも客にも人気の「カレー鍋」は糸コンが主役
このごろ、よくカレー鍋をやる。もともと、そば屋のカレーうどんなど、和風の出汁の効いたカレー味が好きなのだ。我が家では、すき焼きやタラちり、ねぎまなどと並ぶ定番だ。カレーの香りに食欲を刺激され、下町の…
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猪伝説の妙見宮・和気清麻呂公の怒りに触れた気がして…
郷里の小倉にある妙見宮という神社に、毎年干支の絵馬を奉納するようになってもう6年になる。妙見宮は足立山の山中にあって、僕は子供の頃からおまいりに行っていた。 この山の名の由来には伝説がある。…
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南阿蘇と福岡の「クッキーと卵」に潜んでいた意外な出来事
福岡の恭子さんは、会うといつも小さな袋に4つか5つ入った同じクッキーを持ってきてくれる。最初にいただいたときに僕がうまいと絶賛したからだと思う。何種類かの味があり、玄米やヒジキ、ローズマリーなどがま…
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学校が休みになると泊りに行った「若松、いまむかし」
北九州市の西の端に、玄界灘に突き出した若松という町がある。トマトやスイカの名産地として知られていて、ここに僕の母方の祖父母の家があった。子供の頃は学校が長期の休みになるたび数日間、泊まりがけでその家…
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「くさやとさつまいも」と新島で思い出す“飛騨ん爺親子”
江戸時代に飛騨で重い年貢に苦しめられた農民たちが起こした「安永の大原騒動」という一揆があった。そのとき裕福な町民の身であった上木甚兵衛は、我が身をかえりみず農民たちの味方をしたために重罪に処せられ、…
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京都らしい和風旅館の「門限」を守れず友人の寺へ
京都で個展をするのに、小さな庭のある瓦屋根の、いかにも京都らしい風情の漂う和風旅館を予約した。この宿には10時の門限があり、毎晩、酒場で遅くまで飲んでしまう僕には少し早いような気もした。しかし健康の…
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血糖値を下げる献立「野菜と豆のスープ」の作り方
健康診断で血糖値が高いことが分かり、医師から体重を減らすためカロリー制限を言い渡された。1日に1800キロカロリーしかとってはいけないという。小さなご飯茶碗1杯分が約250キロカロリー、缶ビール1本…
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“怪獣ツメラー”の活躍で日を浴びられた「黒い土たち」
バリバリバリ、どしーん。隣家の解体工事がはじまった。ものすごい音がして振動で家が揺れるので、あわてて戸棚の上の花瓶と熊の木彫りを下ろした。ほこりが舞わないように男がホースで現場に水をかけているが、そ…
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昔ながらの湯治場の良さ残す俵山温泉の「山のなかの本屋」
山口県の俵山温泉のそばに、東京のある本屋が移転したので訪ねていく。俵山は昔ながらの湯治場のよさを残す温泉地で、本屋はそこからさらに山奥にある。車で山を越えていくと、やがて民家もなく山と渓流だけの道と…
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名古屋、甲府、国分寺…地元の酒飲みが集う「酒場の景色」
名古屋に「角屋」という焼き鳥屋がある。夕方5時の開店の時刻には、地元の酒のみたちが次々とやってきて席を埋め、大きな暖簾をすりぬけて、焼き場から串を焼く煙が通りへたなびいている。U字形のカウンターの中…
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酔って床に転がるとき、あれば心強い「腹巻きとももひき」
自分はそれほど肥満ではないと思っていたが、徐々に体がまるっこくなって腹が出てきた。そして、出てくることと何か関係があるのかどうか分からないが、その腹が冷えやすい。冷えると下痢ぎみになる。それで昨年の…
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隣人に笑われた「庭の物干し」彫刻の鑑賞と同じと思えば…
家の南側に狭い庭がある。柿やミカンの木を植え、家庭菜園をするための小さな畑を造るつもりだったが、昨年の冬に引っ越してきてしばらくは家の中の片づけに追われ、何も手をつけられずにいた。工務店に入れてもら…
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自分の煙草を常連客に配り始めた男としぶしぶ「煙草交換」
家の近所に大将が1人でやっている小さなもつ焼き屋がある。そこから少し歩いたところの銭湯まで下駄をひっかけてひと風呂浴び、その店で小一時間飲んで帰るというのが、日々のささやかな楽しみである。焼酎2杯と…
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初めての「朝の酒」は20代の終わりにパリのキャフェーで
はじめてパリへ行ったのは20代の終わりで、12月の寒いときだった。地下鉄を降り、地上に出て最初に思ったことは、「おとぎの国のようだ」であった。子供の頃に見たヨーロッパの絵本に描かれていたのと同じ、古…
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階段の踊り場で窓を開け そこは自分だけの「喫茶階段室」
昨今、愛煙家は撲滅される運命にあるようだが、僕はまだたばこがやめられずにいる。以前、都内の住宅地にある美術館へ行った時に、通りへ出てたばこに火をつけたところ、15メートルばかり離れた場所で子供と遊ん…