鈴木敏夫 新・映画道楽 体験的女優論
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今井美樹編<2>「一度、ナレーションだけ読んでみてくれませんか」と普段着の“素”の声を録音した狙い
高畑勲監督による「おもひでぽろぽろ」(91年)の声の収録が始まった。この映画では主人公のタエ子が小学生だった少女時代を思い出す時に、当時の自分の状況を説明するナレーション部分が、かなり分量がある。 …
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今井美樹編<1>「おもひでぽろぽろ」は、彼女ありきの企画だったんです
先日、鈴木敏夫はある食べ物屋で今井美樹とばったり出くわした。2人は実に25年ぶりの再会。懐かしくて、思わず自然にハグしあったという。 「今井さんには『おもひでぽろぽろ』(1991年)の時に主人…
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風吹ジュン編<5>彼女はきれいさと可愛らしさ、角度によってどちらの魅力も持っている
鈴木敏夫が風吹ジュン本人と実際に会ったのは、「ゲド戦記」(2006年)が最初だった。この作品で彼女は、大賢人の魔法使い・ゲドと、昔から付き合いのある女性テナーを演じている。 「風吹さんをテナー…
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風吹ジュン編<4>かつての恋心が燃え上がる雰囲気をうまく演じていた
「無能の人」(1991年)で演技派としても認められた風吹ジュン。その彼女の代表作が、中原俊監督の「コキーユ 貝殻」(98年)である。これは山本おさむの漫画を原作に、同窓会で再会した中年の男女の切ない純…
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風吹ジュン編<3>迷走の80年代をくぐり抜けて「無能の人」で吹っ切れた
1980年代、女優・風吹ジュンに転機が訪れる。いろんなドラマで彼女を起用し、「次のドラマはあなたが主役ね」と言ってくれていた脚本家の向田邦子が、81年に飛行機事故で急逝。私生活でも同年に結婚をした。…
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風吹ジュン編<2>「この頃の彼女の役は“暗い”(笑い)。またその暗さがよく似合う」
1975年、向田邦子がメインの脚本家を務めた「寺内貫太郎一家2」で本格的に女優デビューしてから、風吹ジュンは当時気鋭の脚本家が手掛けたドラマに次々出演。主なものを挙げると倉本聰の「前略おふくろ様Ⅱ」…
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風吹ジュン編<1>風吹さんは漫画のキャラクターとして好きになって、それから本人のファンに
風吹ジュンは「ゲド戦記」(2006年)のテナー役と、「コクリコ坂から」(11年)の松崎良子役でスタジオジブリ作品に声の出演者として登場している。彼女のキャスティングは、プロデューサーである鈴木敏夫の…
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大原麗子編<4>「彼女にとって健さんの妻を演じるのは特別なことだった」
山田太一脚本のテレビ「チロルの挽歌」(1992年)は、2009年に大原麗子が亡くなった時、自宅のDVDデッキにディスクが入っていた作品である。彼女はこのドラマを代表作と呼んでいたが、鈴木敏夫も特別な…
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大原麗子<3>サントリーのCMは彼女の本当の意味での代表作だと思う
鈴木敏夫が大好きだという大原麗子の主演映画がある。それが東陽一監督の「セカンド・ラブ」(1983年)だ。これは大原麗子の数少ない主演作で、彼女はグリーンコーディネーターという、コマーシャル撮影や店の…
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大原麗子が出た連続ドラマでは「たとえば、愛」が一番好きなんですよ
倉本聰脚本の「たとえば、愛」(1979年)は大原麗子演じるラジオの人気DJ・九条冬子が、彼女の元夫の工藤六助(原田芳雄)、今の夫で広告代理店に勤める高井五郎(津川雅彦)との間で心が揺れるドラマである…
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大原麗子は小柄だけれど男に負けまいとつっぱった感じがよかった
今から12年前。ひとりの女優が、自宅でひっそりと亡くなった。大原麗子、享年62。大女優と呼ばれた彼女だけに、“孤独死”として報道されたその最期は、周囲に衝撃を与えた。その彼女を鈴木敏夫は、デビュー当…
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「ハウルの動く城」ソフィーの声に倍賞千恵子を起用した理由
「男はつらいよ」シリーズに出演以降、倍賞千恵子は山田洋次監督の「遙かなる山の呼び声」(1980年)や、降旗康男監督の「駅 STATION」(81年)など、日本映画史に残る名編に何本も出演してきた。そし…
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「男はつらいよ」シリーズの本当のマドンナはさくらですよ
倍賞千恵子は「霧の旗」(1965年)から「男はつらいよ」シリーズ第1作の直前まで、9本ある山田洋次監督作のうち8本に出演している。その多くで相手役を務めているのがハナ肇だ。 「倍賞さんとハナ肇…
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「倍賞さんの女優としての幅広さがあると僕は思うんです」
鈴木敏夫が数ある倍賞千恵子の出演作で、一番印象深く残っている映画が、山田洋次監督の「霧の旗」(1965年)である。これは松本清張原作のサスペンス映画で、倍賞は復讐に執念を燃やすヒロイン・桐子を演じた…
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「あるとき宮さんが『倍賞さんは、どうかな?』と言ってきたんですよ」
スタジオジブリの映画「ハウルの動く城」(2004年)でヒロイン・ソフィーの声を演じた倍賞千恵子は、鈴木敏夫にとって忘れられない女優の一人である。彼女をこの映画の声に起用したのは、宮崎駿監督の発案だっ…
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演技力が評価「曽根崎心中」が映画女優・梶芽衣子の頂点
「女囚さそり」シリーズのヒットによって、1970年代のクールなアクションヒロインとして人気を集めた梶芽衣子。その彼女が新たに出会った監督が、「動脈列島」(75年)、「大地の子守歌」(76年)、「曽根崎…
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梶芽衣子主演「女囚さそり」第4弾の田村正和さんがいい
梶芽衣子主演の「女囚さそり」シリーズは、1972年から翌年までに4作品作られている。最初の3本は伊藤俊也、最後の1本を長谷部安春が監督した。 「『女囚さそり』の世界観は、伊藤監督と梶さんがつく…
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梶芽衣子の「女囚さそり」見たさに病院を抜け出し映画館に
11972年の春、大学を卒業した鈴木敏夫は徳間書店に入社する。彼が配属されたのは、「週刊アサヒ芸能」編集部。取材記者として多忙な日々が始まったが、8月19日の誕生日にアクシデントが彼を襲った。 …
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梶芽衣子「野良猫ロック」シリーズは“暇”をどう埋めるかがテーマ
1970年5月に公開された「女番長 野良猫ロック」を第1作とする「野良猫ロック」シリーズは、翌年までに5作品が作られている。その中に毎回役名は違うが、ヒロインとして登場したのが梶芽衣子だった。 …
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梶芽衣子を意識したのは薄幸な女性を演じた「日本残侠伝」
1967年、鈴木敏夫は慶応義塾大学文学部に合格して名古屋から上京した。翌年には社会学科・自治会の委員長になり、学生運動にも身を投じていく。70年安保に向けて、世の中が熱く揺れ動いた時代。そんなときに…