あいつらの末路
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(9)ミス・マープルが住んでいそう
遮光カーテンの隙間を縫って、殺人的な西陽が夫の顔に降り注ぐ。 まるで、蝋人形のようだ。 「あの」朝美は意を決して、最初の疑問を繰り出した。「ここを売ったとして、そのあとはどうするんです…
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(8)突然声をかけられ体が跳ねる
夫は自分の部屋に行ったきり、なかなか出てこない。朝美は二杯目のお茶をいれようとキッチンに立った。と、例のプラスチックの塊のことを不意に思い出し、引き出しから取り出してみる。刻印されている型番を頼りに…
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(7)サーバーがあるのになぜ使わない?
「大丈夫。なんでもないですよ」 夫が、薄く笑う。 これ以上言ったら、なんだか責め立てているような感じになる。 「そうですか。じゃ、お茶いれますね」 「僕はいいです。飲みかけ…
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(6)夫がゴミ袋をぶら下げ玄関に
「え? 嘘でしょう」 玄関ドアが開錠されている。……まさか、泥棒? いやいや、このマンションのセキュリティーはかなりのものだ。ちょっとやそっとじゃ、侵入するのは無理だ。もしかして、私、施錠せず…
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(5)エレベーターの待ち時間に殺意
恋愛なんて、一過性の熱病のようなもの。性ホルモンの暴走が見せている幻影にすぎない。その証拠に、知人たちはみな、熱烈な恋愛結婚の末、破綻している。離婚したり、別居したり、愛人を作ったり。 朝美…
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(4)32階の部屋は圧倒的なパノラマ
「もう、ほんと、いやんなっちゃう」 心の中だけで言ったつもりが、つい、声にでてしまう。フロントのコンシェルジュがあっと顔をあげる。 「おかえりなさいませ。……なにかございましたか?」 …
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(3)まず世帯年収からうかがっても?
「それで、結婚のタイミングはどんな形で訪れたんですか?」 フリーライターの秋沢さんが、ここでボイスレコーダーのスイッチを押した。 朝美は少し声のトーンを上げると、 「まあ、よくあ…
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(2)ぎっくり腰で中腰のまま悶絶
どうして結婚したのか。 そう訊かれたら、石塚朝美はこう答えるようにしている。 「タイミングってやつかな?」 すると、質問した相手は必ず「は?」という表情をし、戸惑いの笑みを浮か…
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(1)夫は私の稼ぎを当てにしている
【熟年パワーカップルが選択した悲惨な末路】 夫は五十三歳のときに、妻は五十二歳のときに結婚。どちらも初婚だったという。世帯年収は二千五百万円ほどだった。 結婚してほどなくして、夫が突然…