「それを愛とは呼ばず」桜木柴乃氏
2013年10月から本紙で連載、全国16紙に配信された「それを愛とは呼ばず」が満を持して単行本化された。直木賞受賞後第1作にして著者初の新聞連載、舞台も新潟と、初めてずくめの小説である。
「新聞連載って毎日コツコツ書いて掲載されて……というイメージがあるでしょうけど、私は、そんなのおっかなくてダメ。待ってもらって、掲載前に全部書き上げたんですよ。普段の小説では、登場人物の転機が訪れるまでをじっくり書くたちなんですが、新聞ではとにかく話を進めることを意識しましたね。でも、今回単行本化するにあたり加筆したのは、1章節にほんの数行ずつ。読み返してみると、『ここに書き加えてくれ』と脚を広げてまってる箇所が見えたんで、そこに“入れ”ました(笑い)」
新潟で手広く事業を手掛ける女社長で、伊澤亮介の10歳年上の妻が、誕生日の夜、事故で昏睡状態に陥った。社内に人脈を持たぬ副社長の亮介はたちまち孤立。義理の息子たちの企みにより、新潟を追われることになる。
同じ頃、タレントとして芽が出ないまま29歳になった白川紗希は、事務所からクビを宣告される。自分を律し、ひたすら努力した10年の幕が閉じたその夜、紗希がアルバイトをする銀座の老舗キャバレーで、2人は出会ってしまう。亮介の存在は、我こそどん底と思っていた紗希にとって「極上の不幸」となり、果たして亮介の運命は狂い始める……。