秋だからこそ身に付く樹木の知識

公開日: 更新日:

「秋の樹木図鑑 紅葉・実・どんぐりで見分ける約400種」林将之著

 歩きなれた公園や遊歩道で見かける木々。桜やモミジ、イチョウなどの定番はすぐに分かっても、名前を知っている木といえば数えるほどしかない――そんな人でも、心のどこかで、樹木や草花などに詳しい人に憧れ、自分もいつかはそうなりたいと、ほのかな夢を抱いているのではなかろうか。

 実は、秋は一年のうちでもっとも人と木の距離が近づく季節だという。人は色とりどりの紅葉に見ほれ、熟した果実に秋を満喫する。一年中、代わり映えしないように見える常緑樹も、この時季に落葉樹と同じく、春に開く葉や花を格納した冬芽を形成するそうだ。

 本書は、紅葉、実、冬芽、樹皮などの秋の見どころがある樹木を集めたカラー図鑑。

 何といっても秋の主役は、豊かな色彩を見せる落葉広葉樹だ。枯れて落ちるだけの葉が、わざわざ鮮やかに紅葉するのは、樹木に寄生するアブラムシなどの害虫に、紅葉の赤色(糖分が多いほど赤くなる)で防衛力の高さをアピールしているなどといわれるが、実は正確な理由は分かっていないらしい。そんな豆知識を頭に入れた後、まずはイロハモミジから始まる「ムクロジ科カエデ属」を変種や栽培品種も含めて紹介。あの切り込みが入った葉のひとつひとつは裂片と呼ばれ、イロハモミジはその裂片の数をイ・ロ・ハと数えたのが名前の由来だとか。裂片が細く、葉のふちに荒いギザギザ(鋸歯)があるのがオオモミジとの違いらしい。このように葉形や葉のつき方、葉のふちの違いなどから、樹木を検索できるようページに工夫が凝らされている。

 他にも、紅葉(赤~オレンジ)や黄葉、果実、ドングリ、松ぼっくりなどを手がかりに、お目当ての木の説明にたどりつくための一覧表など、初心者にも易しいお勧め本。

(廣済堂出版 1600円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    参政党が消せない“黒歴史”…党員がコメ農家の敵「ジャンボタニシ」拡散、農水省と自治体に一喝された過去

  2. 2

    極めて由々しき事案に心が痛い…メーカーとの契約にも“アスリートファースト”必要です

  3. 3

    遠野なぎこさんを追い詰めたSNSと芸能界、そして社会の冷酷無比な仕打ち…悲惨な“窮状証言”が続々

  4. 4

    ドジャース大谷翔平がついに“不調”を吐露…疲労のせい?4度目の登板で見えた進化と課題

  5. 5

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  1. 6

    清水賢治社長のセクハラ疑惑で掘り起こされるフジテレビの闇…「今日からシリケン」と“お触り続行”の過去

  2. 7

    カブス鈴木誠也「夏の強さ」を育んだ『巨人の星』さながら実父の仰天スパルタ野球教育

  3. 8

    千葉を「戦国」たらしめる“超過密日程”は今年の我が専大松戸に追い風になる手応えを感じています

  4. 9

    趣里はバレエ留学後に旧大検に合格 役者志望が多い明治学院大文学部芸術学科に進学

  5. 10

    参政党が参院選で急伸の不気味…首都圏選挙区で自公国が「当選圏外」にはじかれる大異変