「『腸』が喜ぶお酒の飲み方」藤田紘一郎著
お酒の飲み過ぎが肝臓に負担をかけることは広く知られているが、実は他にも大きな負担を強いられている臓器がある。それは、腸だ。
体内に取り込まれたアルコールのうち、胃から吸収されるのは20%ほど。残りの80%は腸から吸収される。アルコールにさらされた腸内では、「腸内フローラ」と呼ばれる細菌叢(そう)が荒らされ、その悪影響は全身の免疫力低下にまで及ぶ。近年では、生活習慣病や心筋梗塞・脳梗塞、そしてがんに至るまで、腸に由来する免疫力の活性化で闘えることが分かってきた。言い換えれば、アルコールで腸内細菌叢が荒らされてしまうと、あらゆる病気にかかりやすくなるということなのだ。
とはいえ、適量のアルコールには血行を促進して疲労を回復させたり、脳の緊張を解いてストレスを軽減させたり、動脈硬化を予防するHDLコレステロールを増やして血栓をできにくくするなどのよい効果もある。そこで本書では、腸に優しいつまみの選び方を伝授している。
例えば、キャベツだ。水溶性の食物繊維は腸内細菌のエサとなり、善玉菌を増やす効果があるが、キャベツにはこの水溶性食物繊維が豊富。生でバリバリと食べてもよし、煮てもスープに溶け出してそのまま残るので、食べ方も自由自在だ。
また、腸の最強の助っ人が、乳酸菌やビフィズス菌が含まれる発酵食品。生きたまま腸まで届いたこれらの菌は、腸内で酢酸と乳酸を作り出し、悪玉菌がはびこるのを防いでくれる。発酵食品をつまみにするなら、海藻類の酢の物やぬか漬け、あるいは前述のキャベツに味噌をつけて食べるのもお勧めだ。
腸にも優しい、賢いお酒の飲み方を知っておきたいものだ。 (日本実業出版社 1400円+税)