「もの忘れをこれ以上増やしたくない人が読む本」松原英多著

公開日: 更新日:

 2025年、日本の認知症患者数はおよそ700万人に達し、65歳以上の約5人に1人を占めると推計されている。一方で、治療の決定打はいまだ見つかっておらず、悪化の速度を遅らせるのがせいぜいという現状だ。

 そこで重要になるのが予防だ。多くの場合「最近もの忘れが気になってきた」というタイミングで取り組むことが多いだろう。しかし確実な治療法がない認知症は、“かかってから”の予防では時すでに遅し。正常な老化の範囲で起こるもの忘れならばいいが、すでに軽症の認知症によるもの忘れだった場合は、難治を覚悟する必要がある。

 では、いつから予防を行えばいいのか。それは、認知症になる前。何の症状もないときから行うことが、認知症に打ち勝つ方法であると本書は解説する。とはいえ、難しいことをする必要はなく、“脳のゴミ”をためない生活習慣を心がけるだけでいい。アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβという老廃物がたまることで発生する。つまり、脳の循環をよくしてこれを押し流すことができていれば、認知症の回避につながるわけだ。

 例えば、食後に1枚、ガムを噛む習慣をつける。咀嚼回数が増えると脳の血流も増えることが分かっているが、現代人の食事は軟らかいものが多くなり、1食ごとの噛む回数は戦前の半分以下になっている。1個のガムを味がなくなるまで噛むと咀嚼回数は700~1200回にもなり、減ってしまった噛む回数を補うことができる。

 脳循環をよくする睡眠や食事、運動法も紹介。脳循環は、実は30歳ぐらいから低下し始めるという研究データもある。認知症予防に早すぎることはないと肝に銘じよう。

(講談社 900円+税)

【連載】長生きする読書術

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  5. 5

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  1. 6

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  2. 7

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方

  3. 8

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  4. 9

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  5. 10

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした