「ダム大百科」萩原雅紀監修
大雨や渇水など、この季節になると何かと話題になるダムだが、国内にどのくらいあるのかご存じだろうか。なんと大小合わせておよそ3000基もあるそうだ。
近年では、観光目的の放流イベントや季節ごとの見学ツアーが催されたり、現地を訪れた見学者だけに配られる「ダムカード」が人気を集めるなど、ダム愛好家が増殖している。本書は、愛好家はもちろん、まだダムの魅力に気づいていない人にそのすべてを教えてくれるダムの面白教科書だ。
そもそもダムとは何か。水をせき止める堤体の基礎地盤から天端(堤体の一番上の面)までの高さ=堤高が15メートル以上のものと定められ、15メートル未満は用途によって、堰やため池などと呼ばれる。
日本一の堤高を誇るのは、1963年に竣工した富山県の黒部ダム(186メートル)。建築中に海外のダム決壊事故を受けて構造を修正し、当時の最先端の技術が投入されたという。
一方、総貯水量が一番は、霞ケ浦のそれに匹敵する岐阜県の徳山ダム(6・6億立方メートル=2008年竣工)、また常時満水位の際の貯水池の面積=湛水面積の日本一は北海道の雨竜第一ダム(2373ヘクタール=1943年同)と、各サイズの比較からもダムによってさまざまな特色があることがうかがえる。
さらにダムの構造や役割、放流設備、そしてその建設工程などの概要をばっちり学習。
その上で、ダム見学・観光の楽しみ方から、よりカッコよく撮るための撮影のコツやダムが描かれた世界の紙幣や切手、行きたくても行けない幻のダム、そして総貯水量が琵琶湖67個分もあるというアフリカのカリバダムをはじめとする世界の巨大ダムやダムの達人「ダムマイスター制度」など。ありとあらゆる視点からダムについて解説。
この夏は、密を避け、涼を求めてダムに行こう。
(実業之日本社 2000円+税)