「キャンプ日和」大町桂月ほか著
探検家の西丸震哉は岩塔ケ原のキャンプ地に何度も行っているが、17、18年前に行った時、妙なものを見たのが気になっていた。
夕方、めったに人が通るはずのない所に登山者姿の男が現れ、西丸たちの方を見ることなく通り過ぎた。山では挨拶くらい交わすものなのに。
今回、西丸は証人代わりの連れと岩塔ケ原に行ったが、原の入り口近くであの男に遭遇した。
西丸は両手を広げて「ちょっと待った! キミ」と叫んでその男の顔を見た。ぶつかる寸前、西丸は横に跳んでその男を避けた。彼は「25年前の私」だった。
ほかに、森林官の加藤博二が見知らぬ旅の薬売りと岩窟に泊まった話など、30人のキャンプ体験。
(河出書房新社 1892円)