「焚き火の本」猪野正哉著
かつては日常の風景だった焚き火だが、今や見かけることもなく、町中で行うことは至難の業だ。しかし、今、空前のキャンプブームと相まって、その焚き火が密かなブームとなっている。
本書は、年間100日は火を焚くという「焚き火マイスター」がその魅力とノウハウを余すところなく教えてくれるカラーガイドブック。
なぜ人は焚き火に魅せられるのか。「炎に癒やされる」「あえて無駄な時間を楽しむ」「自然を満喫できる」など、求めるものは人それぞれ。著者も理由を追求してしまったらつまらない、「焚き火をするとなぜか気持ちいいから」というだけで十分だと語る。
ひとつ言えるのは「焚き火は万能のコミュニケーションツール」だということ。「1人で焚いても決して寂しくならず、仲間と囲めば親睦が深まり、初めましてでも仲良くなれる。たとえ無言になっても不思議と場を成立させてしまう力が、焚き火にはある」そうだ。
一口に焚き火といっても多様なスタイルがある。炎が美しく立ち上がる「直火」(地面で直に火をおこす)がお勧めだが、できる場所は限られ、初心者にはハードルが高い。他にも、手のひらサイズの焚き火が楽しめるネイチャーストーブや、ナイフ一本で焚き火もそのための道具も自然から得られるものだけで作って使う「ブッシュクラフト」、一斗缶に穴をあけただけの「カンカン」系などがあるが、始めやすいのはキャンプ場で「焚き火台」を使用するスタイルだ。
さらに木の種類によって特性が異なる薪のウンチクや薪割り、薪の組み方、そして着火から火の育て方、片づけ方まで。実際の手順に沿って解説。
寒さこそ焚き火の最高のスパイス。写真を見ているだけで、すぐに出かけたくなる。
(山と溪谷社 1800円+税)