「四季彩図鑑」北山建穂著 永方佑樹詩

公開日: 更新日:

 冒頭から漢字のテストで恐縮だが、「蒲葡」「掻練」「褐返」という言葉をご存じだろうか。順に「えびぞめ」「かいねり」「かちかえし」と読む。

 実はこれ、すべて、色を表す日本語だ。

 日本人は、古くからさまざまな色を愛でてきた。平安時代には、「十二単」が象徴する雅やかな「かさね色目」を、ぜいたくが禁止された江戸の庶民は使用が許可された茶、鼠、藍色だけを用いて「四十八茶百鼠」と呼ばれる多彩な色を考案した。

 本書は、四季折々の写真の中に、そうした日本の伝統色を見いだしながら、それぞれの色について解説する「色」図鑑。

 冒頭で紹介した「蒲葡」は、赤みがかかった暗い紫色で、「枕草子」にも登場する。「えび」とはブドウを意味する言葉で、ヤマブドウの実の色にちなんでいるという。この色には、夕闇にたたずむジギタリスの紫色の花の写真が添えられている。

 漢字からは何色か想像もできない「掻練」は、生糸を揉んでしなやかにした「練糸」のような色を指す(諸説あり、淡い紅色を指す場合もあるとか)。この色に添えられるのは、春の足音がかすかに聞こえ始めた「雨水」のころ、ベージュ色の朝日の光の粒に包み込まれた窓の外に広がる風景だ。

 そして「褐返」は、深い藍色で染めた上に、さらに藍をかけた色を指す。

「褐」は、藍色を生地に染み込ませるために搗(か)つ(叩く)ことから生じた言葉で、繰り返し色を重ねることから「褐返」になったという。添えられた写真は厳しい寒さの中、深い藍色の湖面が不気味なほどの静けさを伝える日光・湯ノ湖の風景だ。

 色と写真、そして時折添えられる詩で日本の伝統色105色を紹介。

 見渡せば、身の回りの風景の中にも、美しい日本の伝統色がたくさん隠れている。

(みらいパブリッシング 1980円)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出