「虫のぬけがら図鑑」安田守著
子ども時代、夏になるとセミのぬけがら(羽化殻)をせっせと集めていたという方も多いのでは。
大きく頑丈なセミのぬけがらは、風雨の当たらない場所では1年以上もそのまま残っていることもある。ゆえにぬけがらと聞くと、ついセミを思い浮かべてしまうが、実はすべての虫が脱皮してぬけがらを残す。ただ、その多くは繊細で失われやすく、よく目を凝らさなければ、普段は目にすることは少ないという。
と聞くと、昆虫288種とクモなどの節足動物6種が残した558種類のぬけがらを集めて紹介するこの昆虫図鑑の「凄さ」がよく分かるだろう。
虫は成長とともに何回も脱皮を繰り返し、成虫になると幼虫や蛹の姿からは別人のように変身してしまう。でも、ぬけがらには途中段階の姿が閉じこめられており、ぬけがらはいわば、「虫の成長記録」なのだという。
チョウ類では、卵から孵化した幼虫から蛹になるまで4~8回ほど脱皮を繰り返す。カゲロウ目ではさらに増え、通常で10回以上、中には40回するものもいるらしい。
成虫になる脱皮は羽化、完全変態の幼虫が蛹になる脱皮は蛹化と呼ばれる。
本書では、蛹化時のものを蛹化殻、羽化時のものを羽化殻とし、それぞれの虫ごとにそのぬけがらを、成虫になった姿も添えて解説してくれる。
通常は食べられて残らないエダナナフシの脱皮殻や、ヒガシキリギリスの羽化殻など、貴重な写真も多数収録。タガメやタイコウチなどの成長の過程が一目瞭然で分かる4個の脱皮殻と羽化殻、さらにわずか2分ほどのカゲロウの幼虫から亜成虫への羽化や、数時間ほどかかるトンボやカマキリ、チョウなどさまざまな昆虫の羽化の経過をドキュメント風に撮影した写真まで。きっと虫好きの宝物となるだろう。
(ベレ出版 2530円)