「漫画でわかる バイオエタノール」石川森彦作・画 アメリカ穀物協会監修
世界がカーボンニュートラルへと舵を切る中、とくに注目を集めているのが「バイオエタノール」だ。本書では各国がどのような取り組みを行っているのか、バイオエタノールの基礎知識から今後の展望などを、漫画も交えながら解説している。
トウモロコシやサトウキビ、サツマイモ、麦などのバイオマスを原料とし、原料に含まれる糖やデンプン、セルロースなどを発酵させて蒸留することによりつくられるバイオエタノール。燃やすことで二酸化炭素が排出されても、原料である植物の成長過程ですでに吸収されていることから、空気中の二酸化炭素量はプラスマイナスゼロという計算になる。
2020年の世界の燃料用バイオエタノール生産量合計は約1億キロリットルで、そのうち53%をアメリカが、30%をブラジルが占めている。アメリカの生産量は日本のガソリン消費量に匹敵するほどだ。またサトウキビを原料とするブラジルの政策は合理的であり、砂糖の国際需要はほぼ一定で豊作時には砂糖の値崩れが起きるため、需要以上の余剰分をバイオ燃料として価格の安定化を達成しているという。
ほかにも、欧州や中国、インド、タイ、アルゼンチンなどでもバイオエタノールが生産され、ガソリンと混合され自動車用燃料として広く使用されている。
一方、日本ではカーボンニュートラル政策が打ち出されてはいるものの、家庭で出る廃油を活用したバイオディーゼル燃料の生産や、石炭の代わりに水素で製鉄を行うゼロカーボン・スチールの開発がメインで、バイオエタノールの位置づけが強くなされていない。
本書では、世界に追いつくためにも政策的・社会的な条件の整備が急務であると説いている。
(幻冬舎 1430円)