「再生可能エネルギーの問題点」加藤やすこ著
「脱炭素社会」を目指すために重要な役割を担う再生可能エネルギー。しかし、それが人と環境に過剰な負荷をかけないかを慎重に見極める必要があると、本書は警鐘を鳴らしている。
例えば、風力発電である。一見すると地球に優しいエネルギーのようだが、人に対する健康被害の懸念がある。風車のタワーの先端には発電機などを収めたナセルという装置があり、これが回転羽根であるブレードとつながっている。風を受けてブレードが回ると、その動きが発電機に伝わって電気を起こす仕組みだが、このときブレードからは人の耳には聞こえにくい低周波音が、ナセルからは可聴音が発生する。
可聴音の騒音被害もさることながら、問題は低周波音である。身近なものとして、ヒートポンプ式の給湯器が挙げられ、夜間に稼働してお湯を作る際に発生する低周波音により、不眠や頭痛、めまいなどの体調不良が起きたとして各地で裁判も起きている。脱炭素社会を目指して各地に風力発電装置が増えた場合、広範囲で健康への影響が出る恐れもある。実際、296基の風車が立ち総出力64万キロワット以上を誇る秋田県などでは、耳鳴りや睡眠障害を訴える住民が多いという。
ならば人の暮らす地域から遠く離れた洋上に風力発電を設置すればいいという考えもあるが、電気を運ぶ海中の送電ケーブルからは超低周波電磁場が発生しており、これが海洋生物に悪影響を与える懸念も指摘されている、と本書。
他にも、太陽光発電の電磁波、バイオマス発電による森林破壊など、再生可能エネルギーの問題点を洗い出している。正しい知識を持たずやみくもに推進しては、本末転倒になることを教えられる。
(緑風出版 1980円)