「ビジュアル解説 みんなで考える脱炭素社会」松尾博文著

公開日: 更新日:

 脱炭素という言葉を頻繁に耳にするようになった。現代の繁栄は化石燃料によってもたらされたと言っても過言ではないが、化石燃料に頼ることをやめて新たなステージへと移行しようという取り組みが、脱炭素である。なぜ私たちは脱炭素社会を目指すのか。本書ではその基礎知識から、世界と日本の現状や課題などをオールカラーの図解をもとに分かりやすく解説している。

 世界の温暖化ガスの総排出量の8割近くを占めるCO2は、おもに化石燃料を燃やすことで発生する。世界のCO2排出量の内訳を見てみると、全体の3割を占める中国がダントツ。次いでアメリカ、EU、インド、ロシア、そして日本の順となっている。国連の「気候変動に関する政府間パネル」が2021年8月に公表した第6次評価報告書によると、2050~60年に温暖化ガスの排出実質ゼロを達成しても、40年までに世界の気温は1.5度上昇するという。脱炭素社会を目指すには世界の総力戦で、しかも早急に取り組むことが不可欠だ。

 一方、そのために必要な再生可能エネルギーの導入では、欧州各国が電源構成のうち3~4割を占めている中、日本では18%にとどまっている。実は、単位面積当たりの太陽光設備の導入量は、主要国の中で日本が最大である。しかし、山地が多く平野が少ない国土では適地がどんどん減っているという課題がある。50年に温暖化ガスゼロを目指すなら、再エネ率は5~6割が必要という試算もある。農地やビルなど太陽光パネル設置の候補地を増やすための規制緩和や、事業者の支援策の整備などが急務であると本書。

 各産業による取り組みも紹介。脱炭素の教科書の決定版だ。

(日経BP 1760円)

【連載】ポストコロナの道標 SDGs本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    相撲協会の逆鱗に触れた白鵬のメディア工作…イジメ黙認と隠蔽、変わらぬ傲慢ぶりの波紋と今後

  2. 2

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    《2025年に日本を出ます》…團十郎&占い師「突然ですが占ってもいいですか?」で"意味深トーク"の後味の悪さ

  5. 5

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  1. 6

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  2. 7

    結局《何をやってもキムタク》が功を奏した? 中居正広の騒動で最後に笑いそうな木村拓哉と工藤静香

  3. 8

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 9

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10

    高校サッカーV前橋育英からJ入りゼロのなぜ? 英プレミアの三笘薫が優良モデルケース