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「『動物の権利』運動の正体」佐々木正明著

 読者諸氏にも、ペット命の動物好きは多いはず。いま、かつてない盛り上がりを見せるのが動物の権利への関心だ。



 動物の権利を日本人が意識し始めた大きなきっかけのひとつが和歌山県太地町のイルカ漁騒動。欧米の環境保護活動家たちがひなびた漁師町になだれ込んだだけでなく、イルカの追い込み漁を流血の惨事として告発した映画「ザ・コーヴ」が大きな注目を世界中で集めたのだ。本書はその太地町に住み込んだ若い日本人活動家レンとミミらに密着したノンフィクション。著者は元新聞記者だ。

 かつて敵意むきだしで漁師たちを制止しようとした欧米の活動家とは反対に、レンは住民票を太地町に移し、町民と親しくあいさつをかわし、追い込み漁の現場にもけっして直接関わらない。代わりに高性能のドローンとカメラで毎日監視を続け、スマホとSNSで世界中に監視動画を拡散させる。ドローンもカメラも監視活動に出るための電動アシスト自転車も、すべてネットを介した支援者たちが買って寄付してくれたものだという。

 SNS時代ならではの静かだが強固な運動の様子が伝わる。その核心にあるのは「動物には人間と同等の権利がある」とする哲学と、生態系全体の調和を重んじる「ビーガン」(脱搾取)の思想。終章では、アメリカをはじめとする世界の状況を伝えるリポートを太地町で暮らす環境研究家で元記者のアメリカ人活動家が寄稿している。

(PHP研究所 1045円)

「動物の権利・人間の不正」トム・レーガン著 井上太一訳

 動物の権利運動は単に「動物がかわいい」と主張するわけではない。その目標は①商業的畜産業の全廃②毛皮産業の全廃③科学における動物利用の全廃、にあるという。たとえば、薬品の動物実験などはもってのほかになるのだ。

 著者は動物の権利運動を精力的に繰り広げるアメリカの元大学教授。既に1980年代から動物の権利を主張してきた先駆者だ。5年前、80歳を目前に肺炎で亡くなったが、動物の権利論を哲学的に基礎づけた功績で世界的に名高いという。本書はその主張を体系的に解説した入門書。

 アメリカの鉄鋼業盛んな都市圏に生まれた著者は、当たり前のように肉食中心の生活を送り、大学の学費稼ぎに肉屋でアルバイトもした。授業で動物の解剖実習をしたときも何ら感じなかった。それが哲学者になり、ベトナム反戦運動を機に、戦争と暴力に反対して、ガンジーの平和思想に触れたのをきっかけとして、考えを改めるに至ったという。

 そんな自身の歩みを語りながら、平易な筆致で実感あふれる哲学論が語られる。

(緑風出版 2750円)

「岐路に立つ『動物園大国』」太田匡彦、北上田剛、鈴木彩子著

 夏休みシーズンには特に人気になる上野動物園。140年前に開園したが、いま動物園という施設は世界で岐路に立っているという。本書は朝日新聞の連載記事をもとに再構成した問題提起のリポートだ。

 現在、動物園が抱える問題のひとつが「余剰動物」。園内で繁殖させたものの、財政難などさまざまな理由で飼いきれなくなった動物は、他の園に無償で譲渡されたり交換の対象になる。ペットショップに転売される例も少なくないという。また、公立園は入場料収入などでは自立できず、多くが自治体予算に依存する財政難に悩まされたまま、先行き不透明を余儀なくされている。

 日本の動物園は「子育て支援」や「世代間の思い出継承」を担いながらも、生物多様性などを重視した「動物のため」の視点が欠けている。あとがきで著者は、子犬を小道具に使った写真を肖像撮影しようとして、ハリウッドスターに叱られたエピソードを紹介している。

(現代書館 1980円)

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