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「世界2.0」佐藤航陽著

 近ごろ話題のメタバース。インターネットの新しい扉を開く……というのだが、その正体は?



 メタバースとは何か。インターネット上につくられた3次元(3D)の仮想空間のことだ、と本書は冒頭でずばり。「メタ」(超)と「ユニバース」(宇宙)を組み合わせた、30年前のSF小説に出てくるコトバだそうだ。

 現実を超える「超空間」の中で新たな人生や社会が生まれるというと、かつて話題になった「セカンドライフ」を思い出す。「アバター」などのコトバをはやらせながらもポシャったゲームだが、失速の理由は当時の通信速度が遅すぎたこと。高速で常時接続が当たり前になりつつある今、既存の空間意識を超えるメタバースが注目の的なのは必然なのだろう。

 著者は早大在学中に起業し、7年前には20代で東証マザーズに上場したIT事業家。「セカンドライフ」の失敗は、その後に続くITビジネスに反面教師となった。そこを評価すべきだという。

 現在のメタバースのキモは生活空間の3次元化。具体的にはVR(バーチャルリアリティー)機器がスマホのように普及するイメージだ。パソコンやスマホに比べるとVR端末の普及は遅い。難関は「ゴーグルを頭につける」点。そこに人々を慣れさせる過程が、どこまでスムーズかが肝心な点になるという。

(幻冬舎 1650円)

「メタバース さよならアトムの時代」加藤直人著

 京都大学で量子コンピューターを研究していたが、大学院を中退。一人でスマホゲームを開発しながら3年間のひきこもり生活を送ったというのが本書の著者。ここではメタバースを「人類が夢に描いた生活スタイル」という。

 世間でメタバースが話題になる前から、未来を先取りしたプラットフォーム事業を国内で展開。自分以上に「『ど真ん中』から語れる人間はいない」と意気軒高だ。

 第1章ではメタバース関連のゲームやライトノベル、注目の海外企業などを紹介。第2章では現在のメタバース市場を概説。3.4章は人類史にとってのメタバース、バーチャルリアリティーの現状などを解説する。

 書名の「アトム」は鉄腕アトムではなく、モノや人間など現実の物体を指す。

 これからは物体が移動することで富が生まれるのではなく、データという形のないもののやりとりで社会がつくられていくと説いている。

(集英社 1650円)

「メタバース超入門」武井勇樹著

 いま、これほどまでにメタバースが話題になっているというのは、既に市場や経済圏の広がりが機関投資家の判断や行動を左右するまでになったということだ。本書はITベンチャー業界を歩み、米国留学を経て、いまはメタバース企業のCOO(最高執行責任者)となった著者がメタバース経済圏の現在を紹介。メタバースの基本からビジネスの広がりまで、全部で66項目をカラー写真をまじえ、すべて見開きで簡潔に解説。「60分でわかる!」との触れこみに説得力を与える。

 メタバースならではの体験といえばVRだが、ゲームなどエンタメ分野だけでなく、ビジネス分野でVRがどう活用されるのかまでわかりやすく解説してあるのがいい。

(技術評論社 1320円)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

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