「箱庭の巡礼者たち」恒川光太郎著

公開日: 更新日:

 100年に1度といわれる豪雨が降った日、母は行方不明になった。家の近くに流されてきた泥だらけのガラクタの中から、僕は大きな黒い箱を拾った。数日後の満月の晩、箱をのぞいてみると、中に森や城や町がある箱庭ができていた。その翌日、母の遺体が見つかった。

 母の葬儀の後、箱を見ると、箱庭の町には母によく似た女性がいた。森では6カ月しか生きられない竜が生まれた。中学1年のとき、同級生の絵影久美に箱を見せた。父には「空き箱」にしか見えなかったのに、絵影は「あ、竜」と言った。そして「この箱庭世界、入れるよね」と。

 だが、行けても戻れない、たぶん。(「箱のなかの王国」)

 ほかに、家出した母を追って炭鉱町を出た姉弟の物語などファンタジー6編を収録。

(KADOKAWA 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  4. 4

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 5

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  1. 6

    桜井ユキ「しあわせは食べて寝て待て」《麦巻さん》《鈴さん》に次ぐ愛されキャラは44歳朝ドラ女優の《青葉さん》

  2. 7

    江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり

  3. 8

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  4. 9

    西内まりや→引退、永野芽郁→映画公開…「ニコラ」出身女優2人についた“不条理な格差”

  5. 10

    遅すぎた江藤拓農相の“更迭”…噴飯言い訳に地元・宮崎もカンカン! 後任は小泉進次郎氏を起用ヘ