「『普通』ってなんなのかな」 ジョリー・フレミング、リリック・ウィニック著 上杉隼人訳
5歳で自閉症と診断され、普通の学校に行けずにホームスクーリングで学んだジョリー。
高校卒業後、サウスカロライナ大学に進み、イギリスのオックスフォード大学の奨学金を得て大学院に進学。現在は気候科学者として母校の大学の研究員をしている。
本書は、そんなジョリーがリリックとの対話を通じて、自分がどう思考し、どう生きてきたのかを率直に語るもの。自閉症者全体を代弁しようとか、克服法をアドバイスしようとかいったものではなく、普通とされる世界の中で生きてきた自分の見方と考え方を紹介することで、普通とは何かを問い直す本となっている。
たとえば、ジョリーは普通の人がみな同じ性質ではないのと同様に、自閉症者もステレオタイプなイメージとは異なると述べる。自閉症を矯正しようとしたり社会から取り除こうとしたりする動きに対して、自閉症だけの問題にとどまらない可能性を指摘。自閉症を受け入れる難しさより、自閉症者がもたらす視点にも目を向けるべきと主張している。巻末には、訳者との対談も収録。
障害者を巡る日本の現状への、ジョリーの意見も掲載されている。
(文藝春秋 2750円)