「『普通』ってなんなのかな」 ジョリー・フレミング、リリック・ウィニック著 上杉隼人訳

公開日: 更新日:

 5歳で自閉症と診断され、普通の学校に行けずにホームスクーリングで学んだジョリー。

 高校卒業後、サウスカロライナ大学に進み、イギリスのオックスフォード大学の奨学金を得て大学院に進学。現在は気候科学者として母校の大学の研究員をしている。

 本書は、そんなジョリーがリリックとの対話を通じて、自分がどう思考し、どう生きてきたのかを率直に語るもの。自閉症者全体を代弁しようとか、克服法をアドバイスしようとかいったものではなく、普通とされる世界の中で生きてきた自分の見方と考え方を紹介することで、普通とは何かを問い直す本となっている。

 たとえば、ジョリーは普通の人がみな同じ性質ではないのと同様に、自閉症者もステレオタイプなイメージとは異なると述べる。自閉症を矯正しようとしたり社会から取り除こうとしたりする動きに対して、自閉症だけの問題にとどまらない可能性を指摘。自閉症を受け入れる難しさより、自閉症者がもたらす視点にも目を向けるべきと主張している。巻末には、訳者との対談も収録。

 障害者を巡る日本の現状への、ジョリーの意見も掲載されている。

(文藝春秋 2750円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カーリング女子フォルティウス快進撃の裏にロコ・ソラーレからの恩恵 ミラノ五輪世界最終予選5連勝

  2. 2

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  5. 5

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  1. 6

    円満か?反旗か? 巨人オコエ電撃退団の舞台裏

  2. 7

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 8

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 9

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 10

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー