「きれいな言葉より素直な叫び」新井見枝香著

公開日: 更新日:

 著者が師匠と慕う、直木賞作家・桜木紫乃氏に連れられて、ストリップ劇場「シアターU」を訪れたのはおよそ4年前。初めて見た舞台で、踊り子・相田樹音嬢にたまらなく魅せられる。そんなある日、樹音嬢の提案で、著者は一緒に舞台に立つことに。演目は桜木氏の小説「裸の華」。実は主人公のモデルは樹音嬢だったのだ。脱ぎこそしなかったが、観客席にいた桜木氏は大いに驚き、舞台上には祝福のリボンが舞った。袖で樹音嬢に「踊り子になったら?」と言われ、その場で「ハイ」と答えたのは39歳のときだった。

 書店員・エッセイスト・ストリッパーの3足のわらじで活躍する著者が「生きづらさ」を原動力につづったエッセー。

 踊り子の芸を見ながら思い出した「嘘を真に魅せるのが踊り子の腕」という師匠の言葉、ストリップ界隈の男性の不器用だが紳士的であろうと努力する姿、A姐さんからもらった豪華な衣装から、ある客からの指摘に「エロを遠ざけていた」自分の屈折に気が付き、メークもポーズも大きく変えたことまで。

 見る側から見せる側に立って気づいた踊り子たちの矜持、そして気持ちの変化と新たな覚悟にストリップファンならずとも応援したくなる。

(講談社 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    相撲協会の逆鱗に触れた白鵬のメディア工作…イジメ黙認と隠蔽、変わらぬ傲慢ぶりの波紋と今後

  2. 2

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    《2025年に日本を出ます》…團十郎&占い師「突然ですが占ってもいいですか?」で"意味深トーク"の後味の悪さ

  5. 5

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  1. 6

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  2. 7

    結局《何をやってもキムタク》が功を奏した? 中居正広の騒動で最後に笑いそうな木村拓哉と工藤静香

  3. 8

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 9

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10

    高校サッカーV前橋育英からJ入りゼロのなぜ? 英プレミアの三笘薫が優良モデルケース