「きれいな言葉より素直な叫び」新井見枝香著
著者が師匠と慕う、直木賞作家・桜木紫乃氏に連れられて、ストリップ劇場「シアターU」を訪れたのはおよそ4年前。初めて見た舞台で、踊り子・相田樹音嬢にたまらなく魅せられる。そんなある日、樹音嬢の提案で、著者は一緒に舞台に立つことに。演目は桜木氏の小説「裸の華」。実は主人公のモデルは樹音嬢だったのだ。脱ぎこそしなかったが、観客席にいた桜木氏は大いに驚き、舞台上には祝福のリボンが舞った。袖で樹音嬢に「踊り子になったら?」と言われ、その場で「ハイ」と答えたのは39歳のときだった。
書店員・エッセイスト・ストリッパーの3足のわらじで活躍する著者が「生きづらさ」を原動力につづったエッセー。
踊り子の芸を見ながら思い出した「嘘を真に魅せるのが踊り子の腕」という師匠の言葉、ストリップ界隈の男性の不器用だが紳士的であろうと努力する姿、A姐さんからもらった豪華な衣装から、ある客からの指摘に「エロを遠ざけていた」自分の屈折に気が付き、メークもポーズも大きく変えたことまで。
見る側から見せる側に立って気づいた踊り子たちの矜持、そして気持ちの変化と新たな覚悟にストリップファンならずとも応援したくなる。
(講談社 1870円)