「東京彰義伝」吉森大祐著

公開日: 更新日:

 時は明治15年。明治維新から時がたち、功績のあった者たちに報告書を提出するようにという政府からの指示に対して、勝海舟は江戸開城の交渉事はすべて自らが判断指示したことだという報告書を提出していた。

 このままではすべてが勝海舟の手柄になってしまうと焦る香川善治郎は、師匠の山岡鉄舟に急いで自らの働きを報告すべきだと進言したものの、手柄にこだわらない鉄舟は香川の言葉に取り合わない。

 仕方なく書面の代筆を願い出た香川は、鉄舟になぜ江戸が東京になったのかを知るためには「この町そのものである女」といわれる佐絵という女の話を聞くとよいといわれ、佐絵に会いに行く。実は、下町の湯屋「越前屋」の娘である佐絵は、上野寛永寺の輪王寺宮と深い絆があった……。

幕末ダウンタウン」で第12回小説現代長編新人賞を受賞して以来、独自の視点で歴史に光を当てる著者の最新作。本書は、讃岐出身で当時の事情を知らない香川の視点から、江戸城無血開城時に勃発した上野戦争の際に、彰義隊の旗頭になった輪王寺宮の真実に迫っていく。江戸庶民を愛し愛された輪王寺宮が印象的だ。

(講談社 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  2. 2

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  3. 3

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  4. 4

    田中圭が『悪者』で永野芽郁“二股不倫”騒動はおしまいか? 家族を裏切った重い代償

  5. 5

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  1. 6

    永野芽郁「二股不倫報道」の波紋…ベッキー&唐田えりかと同じ道をたどってしまうのか?

  2. 7

    レベル、人気の低下著しい国内男子ツアーの情けなさ…注目の前澤杯で女子プロの引き立て役に

  3. 8

    芳根京子《昭和新婚ラブコメ》はトップクラスの高評価!「話題性」「考察」なしの“スローなドラマ”が人気の背景

  4. 9

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  5. 10

    大阪万博会場は緊急避難時にパニック必至! 致命的デザイン欠陥で露呈した危機管理の脆弱さ