「秘密の絶景in北海道」佐藤圭著
「秘密の絶景in北海道」佐藤圭著
北海道の日本海側、留萌市で生まれ育った著者によると、道北は冬の間、豪雪に長い間閉じこめられる厳しい環境ゆえに、知られていない手つかずの自然が多く残されているという。
有名な観光名所でもなく、アクセスも悪いため「『秘密』にしたくなくとも『秘密』になってしまっている」、そんな故郷の絶景を撮影した写真集。
留萌の黄金岬は夕焼けの名所。沈んだ太陽の名残で地平線近くは黄金色に輝き、徐々にその赤みを増していく空、そして夕日を反射した海面はオレンジというよりは深紅に染まっている。「爆焼け」と呼ばれる夕焼けは、一生に一度は目にしてみたいと思わせるほどの美しさだ。
留萌港では、入り口に立つ2基の灯台の真ん中を水平線に沈んでいく夕日が、だるまの形になる「だるま夕陽」が年に数回見られる。
また夜は夜で、満天の星の下、漆黒の海とは対照的に地平線のいさり火が雲に反射して幻想的な海の景色をつくり出す。
そうしたいくつもの美しい表情を見せる海岸線だが、時化になると、一転して別の顔を見せる。留萌の海岸は大波が押し寄せることでも有名で世界三大波濤のひとつに数えられており、2017年には大波によって1基の灯台が叩き折られたという(21年再建)。
表紙のダケカンバやウラジロナナカマドなどの紅葉がエゾ沼の水鏡に映り込んだ錦秋の写真は、大雪高原で撮影されたもの。
札幌や旭川側から見ると、大雪山系の最高峰・旭岳の裏側に位置する大雪高原は、道民にもあまり知られていない紅葉の名所だそうだ。
遠くに冠雪した山々と紅葉、そして青空とのコントラストが映える式部沼の光景など、まさに北海道を象徴する紅葉の風景といえる。
留萌と稚内の中間に位置する初山別村は、新千歳空港から約4時間半とアクセスは悪いが、日本最北の天文台が設置されるほど星空の美しい村。海の守り神、金比羅神社は、同村の海岸に面した場所にあり、海中に建てられた大鳥居と天の川の競演に息をのむ。
また、山手線の内側がすっぽりと入るほど広大なサロベツ原野は、人の手がほとんど入っていない秘境中の秘境。そのサロベツ原野から沖合の利尻島を眺めると、別名「利尻富士」とも呼ばれる利尻山が水平線からそびえ立つ。
その山頂に夕日が沈めば、本家にも負けない「ダイヤモンド富士」となる。
ほかにも、グリーンフラッシュやサンピラーなど、珍しい気象現象をとらえた写真をはじめ、お互いに天敵のオジロワシとキタキツネの命を懸けた戦いや、海に打ちあがる魚や海獣を求めて冬の海岸に集結したオオワシの群れなど、北の大地で生きる動物たちも活写。
ページが進めば進むほど北海道に行きたくなるおすすめ本。
(講談社 2640円)