「街場の米中論」内田樹著
「街場の米中論」内田樹著
かつてアメリカは超覇権国だったが、今はその力が低下して、「不愉快な隣人」である中国と共生しなくてはならない。対話や説得は一時棚上げにし、「とにかく生きのびる」という全員が共有できる目標を掲げることが必要だ。
アメリカでは「自由と平等」という食い合わせの悪い二統治原理が葛藤しているが、フランス革命では、もうひとつ「友愛」を掲げている。これは自由と平等を調停する優れた着眼点である。自由の主体は個人で、平等の主体は公権力だが、友愛の主体はその中間にある共同体で、それが自由主義と平等主義の暴走を食い止めるのだ。友愛とは、井戸に落ちかけた子どもに手を差し伸べる「惻隠の心」である。だが、それが体重100キロの子どもだったら?
内田樹が米中の本音に迫る。 (東洋経済新報社 1760円)